ローリングストーン誌が選ぶ「2017年ベスト・ムービー」

ローリングストーン誌が選ぶ「2017年度ベスト・ムービー」

ゴールデンウィークも後半戦、昨年話題となった映画をチェックしてみるのはいかがだろうか。第二次世界大戦からアメリカの出版・報道の自由を守る闘い、デトロイトを恐怖の場所へと変えた暴動まで、米ローリングストーン誌の名物映画評論家・ピーター・トラヴァーズが選ぶ2017年のベスト・ムービー10本を紹介する。

2017年、ハリウッドは恐ろしい現在と不安な未来を表現するために過去の題材を使った。ベテラン監督(スティーヴン・スピルバーグ)の作品も、新人監督(ジョーダン・ピール)の作品も、自分のメッセージを伝えたいアーティストたちの強いパワーを感じたはずだ。扱われたテーマは多種多様。爆発寸前のレイシャル・ポリティクスを扱った『ゲット・アウト』、報道や出版の自由を制限しようとするアメリカ大統領の違法な企てを扱った『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』、権力に対抗する無力感を感じたときに湧き上がる憤怒を扱った『スリー・ビルボード』、地球規模の悲劇に向かって邁進している世界で生きるための本質的な問いを扱った『ダンケルク』。2017年のベスト・ムービーは、私たちが怒り心頭に達し、もう我慢ならないというメッセージを発信していた。

10位『ファントム・スレッド』

2017年最後に登場した素晴らしい映画は、ポール・トーマス・アンダーソン脚本・監督作品。彼のメッセージの強さと映画の多彩さは無限だ。1950年代のロンドンの豪華なファッション界を舞台に、ダニエル・デイ=ルイスがスタイル革命で自分の世界が崩壊しそうなトップ・デザイナーを演じる。彼のクリエイティヴィティと同様に私生活も激しく揺れ動く。若いミューズ(ヴィッキー・クリープス)が一列に並んだ女性に混じって彼の指示でジャンプすることを拒む。異性間の駆け引き、昔と今が作品全体にこだましている。そして、その結末は人々の想像を裏切るものだ。しかし、アンダーソン監督は、愛を究極の強迫観念で人を成長させることも破壊することも可能だ、と思っている。一度この作品を見てしまうと、劇中の一筋縄でいかない秘密の数々が頭から離れなくなる。というか、忘れたくなくなるのだ。

日本公開:5/26(土)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷(6/9〜)ほか全国ロードショー

9位 『ゴースト・ストーリー(原題:A Ghost Story)』

ある女性(ルーニー・マーラ)が死んでしまった恋人(ケイシー・アフレック)に取り憑かれるという、不朽の超自然現象ストーリーを描いたデヴィッド・ロウリー監督作品。映画そのものやアートとしての映画に対する信頼を回復するに足りる、情熱的で、野心的で、創意工夫をこらした実験が到るところに散りばめられている。

日本公開:未定

Translated by Miki Nakayama

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