世界を制した映画『ブラックパンサー』監督と主演のエモーショナルな物語

映画『ブラックパンサー』主演のチャドウィック・ボーズマン(Norman Jean Roy for Rolling Stone)

史上最も「ラディカル」なスーパーヒーロー・ムービーと言わしめ、全米大ヒットとなった映画『ブラックパンサー』。ライアン・クーグラー監督と主演のチャドウィック・ボーズマンが、ローリングストーン誌に明かした「ブラックムービー革命」の知られざる背景とは?

ハリウッドで大きく変わろうとしている、アフリカン・アメリカンを巡る状況

2年前にチャドウィック・ボーズマンが出演した『キング・オブ・エジプト』は、お世辞にも優れた作品とは言えなかった。それだけでなく、同作はアフリカの神々役にスコットランド人の白人俳優、デンマーク人の白人俳優、そして少なくとも7人のオーストラリア人の白人俳優を起用したことで、ホワイトウォッシュの典型例として批判を浴びた。数学の発明者とされる、知恵を司るエジプトの神トトを演じたボーズマンは、主要キャストにおける唯一の黒人俳優だった。公開前に行われたインタビューで、ボーズマンは自分がその問題点を認識した上で出演に同意したこと、そして黒人の俳優が1人だけでも登場するべきだという思いからだったことを告白している。「でも現実を見ないといけなかった」。彼はあっさりとした様子でこう付け加えている。「キャストが黒人だけの映画で、1400万ドルの予算を回収するのは難しいからさ」


米ローリングストーン誌の表紙を飾ったチャドウィック・ボーズマン(Photograph by Norman Jean Roy for Rolling Stone)

あれから2年、状況は大きく変化した。主要キャストを黒人俳優で固めた『ブラックパンサー』に2億ドルという巨額の予算が投入されたことは、その事実を物語っている。時代がようやく追いついたということなのだろう。1966年にスタン・リーとジャック・カービーが生み出した史上初のブラック・スーパーヒーローは、ボーズマンがそのキャラクターを演じた2016年作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で、初めて本格的な銀幕デビューを飾った。不当にも白人のキャラクターばかりを送り出してきたマーベル・シネマティック・ユニバースの発足から10年、史上初のブラック・スーパーヒーロー・ムービーが公開された。

「大きな波が押し寄せているのを感じるよ」。ボーズマンはそう話す。「『マルコムX』が公開されたときの興奮は今も覚えてる。でも多様で包括的なこの映画には、より大きな期待が寄せられているのを感じるんだ。マーベルの映画が好きじゃない人なんていないしね」

彼は決して誇張しているわけではない。本作はスーパーヒーロー・ムービーにおける前売り券の売り上げ記録を更新しており、初週の週末興収は現時点で1億6500万ドルと予想されている。この数字はマーベルの単発作品としては『アベンジャーズ』に次ぐ記録であり、初週の週末興収歴代トップ10に入る可能性もある。

Translated by Masaaki Yoshida

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