若者の代弁者、神童・カリードが語る未来への展望

彼の母親であるリンダ・ウルフは、最近まで1等軍曹としてアメリカ軍に従事していた。彼女は軍のバンドにも所属し、コーラスを担当していたという。「母さんは戦場に駆り出されてもおかしくなかったけれど、そうならなかったのは音楽のおかげなんだ」彼はそう話す。ケンタッキー、ドイツ、ニューヨーク、そしてエル・パソと、幼少期のカリードは母親の配属先に合わせて各地を転々とした。「母さんはプロのミュージシャンになることを夢見たこともあった。でも小さかった僕の面倒を見るために、音楽をやりたいという気持ちを軍のバンドの活動だけで消化していたんだ」

去る2月、『アメリカン・ティーン』のヨーロッパツアー中だった彼は、かつて住んだドイツを訪れた。「僕はアメリカに生きる若者たちの代弁者になりたい」彼はそう話す。「若さはあらゆるものを変える力だと思う。今の僕にはそれがみなぎっているんだ。世界中を飛び回りながら、僕は今のアメリカに生きる若者たちの真実を伝えていきたい」『アメリカン・ティーン』のタイトル曲で、彼はアメリカ人であることを誇りに思うと歌っている。「でも現在のアメリカの状況には違和感を覚えてる」そう話す彼は、多くの人間が彼と同じように感じていることを知っている。「遠い異国の地で出会う人々だって、今のアメリカの状況を懸念してる。『アメリカン・ティーン』の歌詞を全部そらで歌う彼らを見てると、僕はまるで母国のファンに囲まれているような気分になってくるんだ。クレイジーだよ。」

クレイジーという言葉は、もはや彼の口癖になりつつある。現在拠点にしているロサンゼルスで取材に応じてくれた彼は、最近2作目の制作に着手したという。ハンティントンビーチを初めて訪れたという彼は、寄せては返す波、そしてビッグウェーブを待つサーファーたちの姿を、いつまでも飽きることなく眺めていられると話す。「こうしてると落ち着くんだ」やがて彼はその腰を上げて歩き出す。先ほどボードウォークを歩いていた時に、知らない若者たち(「ファンとは言いたくないんだ」)から声をかけられたのだという。「よかったら一緒に食事でもどうって誘われたんだ」彼はそう話す。「クレイジーだよね、お互いまったくの他人なのにさ。でもいい気分だよ」


Translated by Masaaki Yoshida

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