米ギブソン、ギター・メーカーのアイコン的ブランドが破産申請

Gibsonレスポースのヘッドストック(Photo by Shutterstock)

エレクトリック・ギターとアコースティック・ギターに革命をもたらした米ギター・メーカー、ギブソン・ブランズ社が倒産の申し立てを行った。今後は楽器製造を継続し、オーディオ機器・家庭用娯楽機器からは撤退するという。

ロックンロールの死を恐れている人々にとって、エレクトリック・ギターとアコースティック・ギターに革命をもたらした米ギター・メーカー、ギブソン・ブランズ社が破産の申し立てを行ったことは悪夢と言えるだろう。

米現地時間5月1日、米ナッシュビルに本社を置くギブソン社は連邦倒産法第11章の倒産処理手続きを行うと発表。今後は再建計画に基づいて事業の再建を行う。その計画には、債務の返済方法を探り、サイドビジネスから撤退し、本来の事業目的であった楽器の製造販売へ回帰することが含まれている。

「過去12か月、事業再建のために尽力してきました。非主力ブランドを売却し、収益を増やし、運転資本の削減に務めてきました」と、声明の中でギブソン社CEOヘンリー・ジャスキヴィッツが述べた。

「非主力ブランド」とは、オーディオ機器・家庭用娯楽機器ビジネスをさし、2014年に1億3,500万ドル(約150億円)で多国籍テクノロジー企業フィリップスから買収していた。これは同社の存在感を幅広い音楽ファンへアピールすることを目的としたものであったが、今後は「段階的に縮小される」という。同社の再建を支援する経営コンサルティング会社が提出した裁判所への申請書によると、ギブソン社の家電事業は「在庫の販売増進につながらず、セールス向上の活性剤にもならないという悪循環に陥っていた」という。同社の株主・証券所有者たちの同意を得て、債務者の株主権利変更手続きと破産手続き中も同社は営業し続ける予定だ。

ギター界のアイコン・ブランドだったギブソン社には倒産の兆候が見られていた。過去3年間の歳入が5億ドル(約550億円)まで落ちていたのである。負債額は1億〜5億ドル(約110〜550億円)と推定され、債権企業数は26社以上とみられる。その中には材料の供給元も含まれるが、ここ数年、ローズウッドの輸入規制がギター・ビジネスの大きな障害となり、ギター全体の売上が劇的に低下しているのも事実だ。(フェンダー社も赤字経営で、楽器販売最大手ギター・センターも危機に瀕している。)

しかし、このニュースには一縷の望みがある。ギブソン社は数々のハウスホールド・ブランド名で楽器製造している点だ。エピフォン、クレーマー、スタインバーガー、ドブロ、ボールドウィンなど、ギター市場ではトップクラスのブランドばかりだ。そこに楽器製造と販売に軸足を戻す再生計画が加わる。つまり、新たな音楽ファンにアピールする真新しい方法を見出す可能性があると言える。

「ギブソンというブランド名はクオリティと同意語です。今日の行動が、無双のサウンド、デザイン、ギブソン・スタッフの情熱がこもったクラフトマンシップを未来の世代へと届けることになるはずです」と、ジャスキヴィッツが述べた。とは言え、未来の世代にギターを学びたいと思う人がどれだけいるかは、また別の問題だ。


Translated by Miki Nakayama

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