デビュー20周年のm-floとダンス・ミュージックの20年を振り返る

ー3rdアルバム『ASTROMANTIC』(2004年)と4thアルバム『BEAT SPACE NINE』(2005年)の流れ、一連のlovesシリーズを振り返るとどんな時期でしたか?

☆Taku:m-floにとってのエレクトロ期って、lovesの最後のシングル「love comes and goes」(2008年)に当たるんですね。で、エレクトロ期とともに僕はm-floをやりたくなくなったんですよ。何でかと言うとDJをもっと本格的にやりたいなと。そのままでもDJをやればお客さんは来てくれるけど、エレクトロの曲をかけると「m-floの曲をかけて」ってなっちゃうから。

VERBAL:一度、パレットクレンジングしたかったんです。

☆Taku:そうそう、キレイに言うとパレットクレンジングなんだけど、そのときは一生懸命だから下手くそなんですよ。不器用というか。だからm-floという名前に頼らず、DJで勝負したいんだと思ってm-floという名前を外したり。当時はある意味でm-floを拒絶していたタイミングではあるのかな。

ーblock.fmを立ち上げたのもそのタイミングですもんね。

☆Taku:確かに。アーティストの延長でDJをやっているのが嫌だったんですよ。今は正反対の考え方をしていて、自分のことをDJだと思っていない。

ー☆Takuさんはカルヴィン・ハリスと一緒にやってましたけど、呼んだのは……

☆Taku:僕です。

ー今では呼べないレベルの。

☆Taku:ですよね。僕とTJOがカルヴィン大好きで、なんとかして呼びたいねって言ってマネージャーとも相談して呼んだみたいな。面白かったのが、そのときは代官山のAIRでやって、こんな長蛇の列あるかっていうくらいの行列で、ヨッシャー!って言ってたら翌日の大阪公演は大コケで(笑)。

LISA:そうなの!?

☆Taku:当時はまだ認知度が低くて大阪まで浸透してなかった。

LISA:何年前?

☆Taku:2009年かな。何でカルヴィン・ハリスかというとBBCだったの。BBCが大好きで、アニー・マックっていうDJの番組でエレクトロの中でいきなりトランシーなシンセを使った曲が流れて、でも最初はすごくロック調の曲で。


カルヴィン・ハリス。スコットランド出身のプロデューサー/DJ。2009年の『Ready for the Weekend』が全英1位を記録。2011年、自身が手がけたリアーナのシングル「We Found Love」が全米で大ヒット曲となり、見事トップDJ の仲間入りを果たした。(Photo by Getty Images)

ー「アイム・ノット・アローン」?

☆Taku:そうです。「アイム・ノット・アローン」のアルバム『レディ・フォー・ザ・ウィークエンド』でハマったっていう。

LISA:今でもすごい好きだよね。

☆Taku:好き。あの頃って実験的なものがオープンだった時代じゃないですか。今って両極端で、テクノにはテクノの作法があって、トップ40にはオールミックスの作法がある。この両極端だと思う。そこにクリエイティヴィティをあまり感じなくて、だったら自分で好きなものをやっちゃえと。

ーそこでまたm-floに力が入ってきて。

☆Taku:いろいろあって、m-floを聴く機会がたくさんあったんですよ。過去の曲を聴くのって、嫌で嫌でしょうがなかったんです。大丈夫なタイプ?

VERBAL:自分はレコーディングしたら聴かないタイプ。トラックダウンでは聴きますけど、その後は歌詞を覚えるために聴く感じかも。作るまでにもう過程を楽しんでいるから。

☆Taku:聴き返すことで「やっぱり、ああするべきだったんじゃないか」って引きずっちゃうタイプなんですよ。古いものを聴きたくないと否定するところがあったんだけど、一昨年くらいから『Planet Shining』と『EXPO EXPO』をめっちゃくちゃ聴くようになったんですよ。

VERBAL:逆に今の自分たちにないものがあるから新鮮に聴こえるのかも。

☆Taku:そうそう!

VERBAL:最近だとフレッシュに感じないけど、それこそLISAに昔のリリックの方が面白かったって言ってもらったときに、過去のリリックノートを掘り返したり。確かに『Planet Shining』を聴いてると、☆Takuの音とLISAのヴォーカルと自分のラップの融合がフレッシュで、狙っていたつもりなんですけど全然違うものができた感覚が新鮮というか。だから今になっても何回も聴ける。何でこんなふうにしようと思ったんだろう?って、いい意味で思うアルバムだったかな。

☆Taku:うん。友達とかが流してるのを聴かされて、“あ、思ったより悪くないな”って思ってそれから聴き始めて、素直に向き合えるようになった。それが今にもつながっているんじゃないのかなと。

Interviewer = Tomo Hirata Text = Takuro Ueno (Rolling Stone Japan), Motomi Mizoguchi

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