アメリカン・ドリームを手中にした台湾系米国人シェフの「マッシュアップ術」

「未来の何割かが過去に起因するとして、これから自分の手で形にしていく部分はどの程度だと思う?」と語るエディー・フアン(Photo by Nathanael Turner for Rolling Stone)

マッシュアップとは、別々の楽曲、またはヴォーカルトラックとバックトラックをミックスして合成するという意味の音楽用語だ。2015年に放映され、アメリカで人気を集めたコメディドラマ『フアン家のアメリカ開拓記』の原作を執筆したエディー・フアンは、まさしくマッシュアップ・アーティストと言っていいだろう。ニューヨーク・マンハッタンでレストランを経営するセレブリティ・シェフである彼は、現在ロサンゼルスに拠点を置き、映画製作に取り組んでいる。

エディー・フアンは、現在アメリカで最も影響力のあるストーリーテラーの一人だ。大きな野心と多様な文化的バックグラウンドを持つ彼は、その偉大な歴史の大部分が移民たちによって築かれたアメリカという国のアイデンティティについて、個性を型にはめようとするようなやり方ではなく、互いの違いを認めた上で共存していくという、多様性の肯定によって成立していると主張する。

マリファナ愛好家、ヒップホップ好きのセレブ、一流シェフ、脚本家といった多様な彼を持つ彼は、自らの経験に基づいたストーリーテリングの新たな舞台にロサンゼルスを選んだが、物事はそう簡単ではないと話す。「この街なら過去最高に面白いものが作れると思ったんだ」。平日の午前11時、まだ眠そうな表情の彼はそう話す。「でもここで出会う人々はみんな、誰も野心的なものなんか求めてないんだ。より無難で、より万人受けするものを作ればいいと思ってる。ヒットさえすれば短命でもいいってわけ。長期的な成功なんて、まるで考えてないんだよ」



フアンは物事を長期的に考えるタイプだ。彼が2013年に発表した自伝に基づいた、アジア系アメリカ人一家の物語を描いたコメディドラマ『フアン家のアメリカ開拓記』について、当初フアンは「大衆に迎合してストーリーを水増しした」としてABCテレビのプロデューサーたちを批判した(最終的にはそれが正しい判断だったと認めている)。食と旅をテーマにしたリアリティ番組『Huang’s World』で一躍有名人となった後も、彼は文化的偏見に晒されるというありがちな事態をうまく回避してきた。ケープコッドでのトランプ支持者とのやり取りや、シチリア島での想定外の投獄など、ユニークな内容で人気を博した同番組の放送権をViceネットワークから買い戻した彼は、今後新シリーズの企画を各社に売り込んでいく予定だという。



彼は現在、『Huang’s World』において最も反響の大きかったエピソードに基づいた初の映画製作に取り組んでいる。「思いやりに満ち、さまざまなスキルを身につけていながら、日々悪戦苦闘する少年についての物語なんだ」。過去数年におけるハリウッドでの経験から学んだことについて、彼は「未熟な人間が大義のために誇らしく死んでいくことを望むのに対し、成熟した人間は大切な誰かのために慎ましく生きることを望む」という、『ライ麦畑で捕まえて』の有名な一節を引き合いに出してみせる。「自分が正しいとしても、自分に才能があるとしても、何もかもが自分の思い通りになるわけじゃない。犠牲や妥協は必ずつきまとうし、勝ち目のない争いは避けるべきだ。でも一度戦うと決めたら、何が何でも勝たなくちゃいけない」

Translated by Masaaki Yoshida

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