WACK渡辺淳之介はなぜアパレルブランドを立ち上げ、実店舗をオープンさせたのか?

自身のアパレルブランド「NEGLECT ADULT PATiENTS」のブランドショップ「MULTiPLE MANiACS」にて(Photo by Motomi Mizoguchi)

BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREを世に送り出したWACKの代表・渡辺淳之介が、アパレルブランド「NEGLECT ADULT PATiENTS」を立ち上げ、東京・渋谷区道玄坂にブランドショップ「MULTiPLE MANiACS」を2月24日にオープンさせた。開店してから2カ月が経過したが、UNiSEX ANTi ADULTを掲げたTシャツ、パーカー、キャップなど、既にほぼソールドアウトになっているという。

渡辺がこれまで手がけたグループと同じく、彼の「読み」がまたもや当たったと言っていいだろう。同ブランドは大学時代からの友人であるface(NIGO®︎がデザインするHUMAN MADEのグラフィックを手がけるイラストレーター)が参加し、今後も彼に近しい友人たちの参加が予定されている。

音楽とファッションは切っても切り離せない関係にあるわけだが、このタイミングで挑んだファッションの世界。その真意を確認するべく、道玄坂の裏路地の奥にあるMULTiPLE MANiACSで話を聞いた。

「洋服は高ければ高いほどいいっていう感覚の持ち主なんです(笑)」

ーWACK所属グループの物販はアイテムのバリエーション、特にTシャツが充実してますよね。そのへんのこだわりが、今回のブランド立ち上げにもうまく作用している気がするのですが。

渡辺:ありもののボディにタグを付けて、オリジナルのプリントをするのがアーティスト公式グッズの基本としてあって、それとは別にオリジナルボディからこだわって作ったりもしていたから、こだわると同時に値段も高くなっていってしまった感じですね。僕は洋服が大好きで、こんなこと言っていいのかどうかとは思うけど、高ければ高いほどいいっていう感覚の持ち主なんです(笑)。自分が大好きだった90年代末の裏原系のファッションも、当時は「普通のTシャツにプリントしただけなのに高いんじゃないか」とか周りに言われましたが、いや、そういうことじゃないでしょと思ってました。

BiSHの物販で扱ってるアイテムって、今では一番高いものでTシャツが6000〜7000円くらいする。もちろん、原価をかけているからその値段なんですけど、その方が単純に作っていて楽しい。それにBiSHやBiSを通じて若い人と接点を持つ機会も増えたので、ファッションという媒介を通じて、面白いことをやってる奴がいるなと下の世代に感じてもらいたくて、ブランドを作ってお店を出すことにしたんです。

最近は伊勢丹メンズ館とか行くと、高い服を着ておしゃれではあるけどオタクな感じの人たちが店員さんとファッションの長話をしてる、みたいな風景をよく見かけて……。でも僕が大学生だった頃は少し違ったんじゃないかなとも思いました。ファッション業界の人たちからは「今はみんなZOZOで洋服を買う。実店舗では洋服が売れないからやめた方がいい」と言われましたけど、かつてのファッション文化の恩恵を享受してきた身としては、どうしても実店舗を設けることにはこだわりたかった。そして、僕もできる限りお店に立とうと考えました。

ーBILLIE IDLE®︎の共同プロデュースで一緒に仕事をしてきたNIGO®︎さんからの影響はありますか?

渡辺:音楽より洋服の方が世界との垣根がないなと思います。着れば分かるという部分もあるんだろうけど、そういう視点はNIGO®︎さんと仕事をさせてもらいながら学んだことの一つです。タイラー・ザ・クリエイターやエイサップ・ロッキーとか、僕が大好きなアーティストが来日すると、絶対にNIGO®︎さんのスタジオに寄って帰っていく(笑)。そういうのもうらやましかったし、自分も何かできるうちにファッションに挑戦したいなという気持ちになりましたね。NIGO®︎さんを見ていて思うんですけど、自分が本当に好きな服を作ってそれが世界でも売れている――天才だし、それって何よりもカッコいい。、僕も自分が好きな服を自分のブランドで作ったら面白いかなと。

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