『フルメタル・ジャケット』俳優R・リー・アーメイ死去、享年74歳:ハートマン軍曹は本物の教官の姿だった

アーメイは役を得ただけでなく、完璧主義者で有名なキューブリックから許可を得て、教官のセリフと罵倒言葉の半分を即興で演じたのである。「キューブリックが録音機のスイッチを入れると、私は力尽きるまで延々とセリフを言い続けた。そのあとで、その中から一番好奇心をそそる言葉を選んだんだよ」とアーメイ。

キューブリックは1987年のローリングストーン誌のインタビューで、「もしシーンごとに100テイク撮れるなら、私の映画が完成することは絶対にないだろう。リー・アーメイを例に挙げると、彼はセリフのコーチから片時も離れずにセリフを覚え、いつでも完璧にセリフが入っていた。確か、彼の平均テイク数は8〜9だったと思う。時には3テイクでOKだった。そんなふうに、彼は常に準備万端で臨んでいた」と語っていた。

ハーマン軍曹の一番の餌食だったパイル二等兵を演じたヴィンセント・ドノフリオは14日、「アーメイは尊敬に値する本物だった。彼が逝ってしまったと知り、一緒に過ごしたあの時の素晴らしい思い出が蘇ってくる」とツイートした。また、『フルメタル・ジャケット』のもう一人の共演者マシュー・モディーンもTwitterでアーメイの死を悼んだ。

ハーマン軍曹としての強烈な演技は、駆け出しの俳優だったアーメイにゴールデン・グローブ助演男優賞のノミネーションという贈り物を与え、そこから30年に及ぶ充実した役者人生がスタートした。

『トイ・ストーリー』シリーズでのセージの声など、権威筋の軍人役にキャスティングされることが多かったアーメイだが、『ミシシッピー・バーニング』、『セブン』、『告発』、『マテリアル・ウーマン』(日本未公開)などにも出演し、『プリフォンテーン』(日本未公開)ではナイキの共同創業者ビル・ボワーマンを、リメイク版『テキサス・チェーンソー』ではサディスティックなホイト保安官を演じた。

またアーメイのTV出演は、『X-ファイル』、『シンプソンズ』、『Dr. House ―ドクター・ハウスー』(ドクター・ハウスの父親役)、ヒストリー・チェンネルのミリタリー系シリーズ番組などがある。

ロギンは「『フルメタル・ジャケット』のセリフで有名になったものがあります。あの“これが自分のライフルだ。同じようなものがたくさんあるが、これが自分のライフルだ”は、実際のライフルマンズ・クリード(※米海兵隊の信条)です。世の中にガニーはたくさんいますが、彼こそが私たちのガニーでした。今後も彼の思い出の中に希望と優しさを見出すことでしょう。みなさんは周囲の軍人や兵士を支援してください。それが彼が一番望んでいることですから」と、投稿を締めくくった。

Translated by Miki Nakayama

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