テイラー・スウィフトのチケット販売戦略:価格変動型セールスは革新的か?需要低下か?

2017年12月、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われたZ100主宰のiHeartRadio Jingle Ballで演奏するテイラー・スウィフト(Photo by Taylor Hill/FilmMagic)

テイラー・スウィフトのようなスーパースターたちが使い始めているのが「ダイナミック・プライシング(動的価格設定)」だ。この価格設定にすると、チケット価格が航空券のそれ同様にコンスタントに変動する。これが音楽業界の将来のチケット販売となるのだろうか?

テイラー・スウィフトの6月2日のシカゴのソルジャー・フィールド公演のチケットを、2018年1月に米チケットマスターで購入したとしよう。このときのチケット価格は995ドル(約10万6千円)。では、同じ席を3ヶ月後に購入しようと値段を確認してみよう。すると、価格が595ドル(約6万3千円)になっているのだ。これはスウィフトが「ダイナミック・プラシング」を導入したせいである。この方式では、航空券と同じように、その時々の需要に合わせて価格が変動する。これはチケットの流通市場を締め出すための新たな販売方式だが、同時に額面価格よりも数百ドル高く買わされるファンを混乱させているのだ。「基本的にチケットマスターがスタブハブ(※StubHub:チケットを売りたい人と買いたい人を結びつけるオンライン・サービス)と同じ役割を果たしている」と、あるコンサート業者が説明する。

この方式を採用したのはスウィフトだけではない。2018年の夏、U2、ケニー・チェズニー、ピンク、イーグルス、シャナイア・トゥエインもダイナミック・プラシングでチケットを販売する(これを米チケットマスターは“オフィシャル・プレミアム・シート”と名付けた)。e-Bayが所有のスタブハブなどのチケット転売業者を打ち負かすために、アーティスト側の最新対策がこれだ。ちなみにスタブハブの2016年の年間売上は10億ドル(約1070億円)を超えている。「普通にチケットを購入してからスタブハブで販売すると、額面価格の3〜5倍の価格になる。それが転売業界だ」と、デイヴ・マシューズ・バンド、フィッシュなどを抱えるレッド・ライト・マネージメントのスチュアート・ロスが言う。また、KISSのマネージメントのドック・マクギーは、チケットマスターが行動を起こすべき理由を教えてくれた。曰く「150ドルのチケットを500ドルで買う人がいるのなら、その差額はバンドに支払われるべきだから」と。

これに異論を唱える者もいる。フー・ファイターズやパール・ジャムはダイナミック・プラシングは導入しないことにした。また、ファーザー・ジョン・ミスティのようなインディ・アーティストもこの方式に否定的だ。「ファーザー・ジョン・ミスティはチケットの価格を真剣に捉えている」と、彼のマネージャーのダン・フレーザーが言う。「高く買いたい人がいるからといって、彼はそれに甘んじないし、差額はテーブルに置いて立ち去るだろう」と。

コンサート業界のあるエキスパートが言う、「業界は新たな信念を取り入れようとしている。つまり、あっという間に完売するチケットの値段設定は適正ではないという考え方だ」と。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE