BOOM BOOM SATELLITES 中野雅之が語る「川島道行と過ごした時間、そしてこれからのこと」

BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之(Photo by Motomi Mizoguchi)



「川島くんがいなくなった今、僕一人で音楽家として何ができて何を提案できるかを考えたい」

ー川島さんのお茶目なエピソードとかって何かありますか?

中野 僕もそんなに人のことは言えないんですけどね、おっちょこちょいなので。ライブのためにニューヨークに行ったとき、ニューヨークの喧騒を歩いている川島くんのリュックから水がだだ漏れしてたんです(笑)。そしたらスタッフが「川島さん、水が出てますよ!」って言うんだけど、「川島さん水が出てますよ」って意味がわかりにくいじゃないですか(笑)。川島くんもリュックを背負ったまま、え!?って驚いてて、それは見てて大爆笑でした。「川島さん水が出てますよ」っていうフレーズはしばらくキラーワードでしたね(笑)。

あとは07年かな、ロンドンからの帰りにロンドン空港で川島くんのチケットがないことが発覚して。スタッフのみんなもあたふたして、「川島さん」とか「川島くん」って言葉が飛び交っていると、カウンターにいたイギリス人のお姉さんが、「ひょっとしてカワシマミチユキ?」って。どうやら、空港に着いたときにチケットを置き忘れたみたいで、それを取っておいてくれたおかげで何とか日本に帰ってこれたんです(笑)。本当に面白いことばかりで、シリアスな時間も過ごしたけど、笑い転げて過ごすような日々でした。面白くて最高の人です。

ー中野さんもチケットを無くしちゃうようなことはあるんですか?

中野 川島くんのことを面白くいじってますけど、先日、とある番組の収録で吉祥寺のサムタイムっていう昔川島くんと働いていたジャバーにお邪魔したんですけど、手土産を持っていこうと思って焼き菓子を買って電車で吉祥寺まで行ったんです。その日寝坊して、わざわざタクシーに乗ってお店まで買いに行ったのに、電車に乗ったときにお菓子がないことに気が付いて。

ータクシーの中に忘れた?

中野 いや、それがお金だけ払って商品をそのまま置いてきちゃって(笑)。現場に着いて焼き菓子のお店に電話したら、名前も名乗りもしない段階で「さっき焼き菓子を置いていった方ですよね!?」ってあたふたしてて。そしたら送料はいいのでお送りしますって、たぶん俺の方が悪いことしてるのにお店の人がすごく優しくしてくれて、そのことをサムタイムの店長さんに言ったら「中野くんぽい」って言われました(笑)。だから、昔からそうだったみたいで。もしかしたら僕のことをきちんとしていて、神経質で完璧主義と思っている方がいるかもしれないですけど、音楽以外のことは全然ダメなので(笑)。有泉さんの前で何かやっちゃったことありました?

ーカール・ハイドとの対談をMUSICAでやってもらったとき、寝坊されて、水を片手に公園通りをすごいあせあせした中野さんが駆け上がってきたくらいです。それ以外に荷物を持っていなくて。

中野 なるほど(笑)。撮影とかあるのにね。

ーたぶん、前の日にお酒を飲んでいたか、制作時期じゃなかったと思うんですけど。

中野 プロモーション時期だったんじゃないですか。その様子を聞くと川島くんとそんなに大差ないなって思いますね(笑)。川島くんって生まれながらにロックスターっぽい雰囲気がある人で、色気があるので歩いているだけですごく声をかけられるんですよ。大学のときもすごくモテて、歩いているだけで女の子がみんな振り返るような感じの人だった。彼自身はそういうことに興味がないので、いきなり声をかけられても普通に握手してサインしてヌボーっとしてるんだけど。僕は全然目立たないので。たまーに声をかけられますけど。

ー中野さんも目立ちますけどね。

中野 そうですか?

ー声をかけにくい雰囲気なのかもしれないですよ。

中野 雰囲気が悪くて(笑)。

ーイメージ的には怖そうみたいな。

中野 そうなのかもしれないですけど、声をかけられてもうまく対応できないと思うので、街で見かけたらできることなら放っておいてください(笑)。今後、BOOM BOOM SATELLITESとして皆さんの前で演奏する機会もないですし、こうやってコミュニケーションを設ける場も取れなくなると思うので名残惜しい気持ちもありますが、皆さんとこうやって近い距離で会う機会もそんなになくなるんだろうなって。

ーBOOM BOOM SATELLITESのプロモーション稼働としてはそうかもしれないですけど、中野さんとしてはこれからも。

中野 そうですね。今までバンドしかやってこなかったので、自分にどんな能力とか可能性があるのかわからないところが楽しみ。だからスケジュールが許す限り、オファーはほぼ受けるようにしています。でもすごく仕事が遅いというか、2年かけてアルバムを1枚作るようなバンドなので。

ー遅いというか、詰めていく細かさに時間がかかっているんですよね。

中野 はい。だからいわゆる仕事として音楽を作るスピード感についていけなくて、あっぷあっぷしながら毎日を過ごしています(笑)。裏方的な仕事も多いし、今これをやってますってアナウンスできない仕事も多いので、中野さん何してるんだろう?って思っている人がいるかもしれないけど実はこれでもフル稼働していて。誰かに頼まれて、「中野さんの能力を使ってこれを良くしてください」って言われるのはとても嬉しい話だし全力でやるんですけど、川島くんがいなくなった今、僕一人で音楽家として何ができて何を提案できるかをちゃんと考えて、しかるべきタイミングで作品という形でみなさんに届けたいなと思っています。

僕は46歳ですけど、若い世代に向けてというよりは、同世代とか同じ時代を過ごしてきた人こそが理解できたり共感できたり、あるいは未来が見えたりするような美術/芸術/音楽ってあると思うんです。SNS全盛のセルフブランディングとか瞬間風速的な話題というところでいろんなモノづくりが行われていて、ポップスって新しい世代に向けて作らないといけないんじゃないかっていう強迫観念がどこかにあるんですけど、それとは全然違う作品至上主義というか、1日で“いいね”がたくさんつくようなことじゃなくても良くて、噛み応えのある作品を自分の世代はしっかり作らないといけないんじゃないかなと。いつかそういうものを皆さんに聴いてもらえるように、今からじっくり考えていこうと思っています。



BOOM BOOM SATELLITES
FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE

【Blu-ray】【完全生産限定盤】
Sony Records
発売中

【完全生産限定盤】
[1] Blu-ray Disc
[2] 書籍型全100ページブックレット
(写真家・平間至氏撮り下ろし、BOOM BOOM SATELLITES年代史Discography、中野インタビュー掲載)

BOOM BOOM SATELLITES奇跡のラストセッションLIVE一夜を完全映像化。2016年6月にBOOM BOOM SATELLITES最高傑作でありVo.川島が最後にレコーディングした作品となった『LAY YOUR HANDS ON ME』のリリースから1年後、メンバー中野雅之、川島道行が生前から希望していた“BOOM BOOM SATELLITESの20年の歴史にライブで幕をとじたい”というメンバー2人の希望を実現させたラストライブの映像。日本を代表する最強映像作家たちが集結し、中野が起こした亡き川島との奇跡のラストSESSION、一夜限りのスペシャルライブの1日のストーリーをあますことなくパッケージに。あの奇跡の夜が蘇る中野雅之が映像、音源を監修したBOOM BOOM SATELLITESとしてのラストプロダクツとなる。
http://www.bbs-net.com/

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