スカパラ谷中敦が自らに問う「正直な生き方」

Rolling Stone Japan vol.02掲載/Coffee & Cigarettes 04 | 谷中 敦(Photo by Kentaro Kambe)


ニューアルバム『GLORIOUS』では谷中らしい言葉を幾つも味わうことができる。たくさんは紹介できないので、今回のアルバムの中で谷中自身が特に好きな言葉を挙げてもらった。「アルバムのタイトル曲でもある“Glorious”はスカパラのメンバーによる歌モノなんだけど、その曲の中で書いた“Memories you can’t share. Are the ones that shine most brightly.(人に言えない想い出こそ実は最高に輝いている)”って箇所は好きだし、大事にしたいと思っているんだよね」と谷中。その言葉を選んだ意味を聞いた。「去年の俺の抱負は“自分を信用しない”だったの。気がついたら、自分で勝手にいろんなことを限定してるよなぁって。例えば、能力的に“これくらいのことならできる”とか、体力的に“明日疲れちゃうから、今日はこれくらいまでにしよう”とかって限界を作っている自分がいるわけ。みんなとメシを食いに行って飲んで盛り上がっても翌日のことを考えて朝までいることはないんだよね。でも本当は、夜中の0時から朝までの時間が大事だったりするかもしれない。朝まで騒いだら次の日は使いものにならないかもしれないけど、一年後の自分が輝くかもしれない。だから、自分でルールとかペースとか作って縛られるのではなく、自由に行こうと思っていて」

付け加えると、谷中は9年前から酒をやめている。そんな谷中の一昨年の抱負は「飲まずに泥酔!」だったそうで、こんな話をさらに続けてくれた。「酒を飲まなくなると軋轢とか摩擦を生まなくなるんだよ。摩擦がないと熱も生まないので、自家発電になっちゃう。今思うのは、人との摩擦、軋轢で熱を生んで、それで自分の人生も熱を生むのっていいなぁって。でも、酒をやめてるから、一昨年は「飲まずに泥酔!」を抱負にしたの。酒飲まなくても常にヤラかしていたいなぁって。だって昔の写真を見ても、コイツ、ヤラかしてるなぁって奴が楽しそうだし。そういう思い出を作るように、体当たりで動いて行きたいんだよね。だから“人に言えない想い出こそ実は最高に輝いている”なんだ」と。



谷中と話していると、自分よりも仲間のことを話してくれる回数が多いのに気づく。これだけのキャリアでこれだけの評価を受けながら、いわゆる自慢的なエピソードはまったくない。谷中の口から出るのは仲間の自慢ばかり。この話の流れでも、今までスカパラが共演してきた仲間たちの名前を挙げながらこんな話をしてくれた。「横山健、細美武士、TOSHI-LOW、峯田(和伸)くん……みんな自分の人生をちゃんと正直に生きてるよね。正直だから結果的に相手を傷つけることもあるし、無防備だから壁にぶつかって、自分が傷つくこともある。でも、傷を負ったときに、我慢するんじゃなくて『痛い!』って声に出すんだよ。彼らはそういうことをしっかりやってる連中でカッコいいと思う。当たり障りのない人生じゃなくて、自分の人生を精一杯生きる……それが一流のロック・アーテイストだと思うし、俺もそうありたいと思うよ」と。

会話に出てきた“壁”という言葉をフックにいつしか壁の話になった。谷中は言う。「壁って、諸刃の剣だよね。自分を守ってくれているんだけど、自分の自由を奪う存在になることもある。壁に守ってもらっていると感じているならいいけど、もし壁を不自由だと感じるなら、その壁は自分で壊せばいい。そもそも壁なんかないんだし、壁を勝手に作ったのは自分なんだからさ」。まるで即興の作詞のように琴線に触れる言葉を紡ぐ谷中。壁の話をこう締めてくれた。「壁なんかもともとないんだぜってことを気がつかせてくれるのが音楽だと思うんだ」と。

そして、スカパラも谷中も国境もジャンルも世代も超えて音楽を奏で、音楽の本質を実践している。谷中の言葉が琴線に触れる理由はそこだ。言葉がうまいからだけではない。谷中の言葉は全て実践と行動に裏打ちされているからだ。 

インタビューが終了した。谷中は一服して次の取材に向かおうとしていた。その背中が妙に力強く、1時間に及ぶインタビューに匹敵しているくらい何かを語りかけてくれていた。



『GLORIOUS』
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
エイベックス
発売中


撮影協力:ONE THE DINER
〒141-0021 東京都品川区上大崎1-1-14 トーカン白金キャステール1F 
TEL:03-6455-7588

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