混沌とするアメリカ:銃規制やBlack Lives Matter運動、若者活動家の善行とあるラッパーの悪行

March for Our Lives Los Angelesに参加した若きBlack Lives Matterの活動家(カリフォルニア州ロサンゼルス 2018年3月24日) Sarah Morris/Getty Images

米国での銃規制強化がかつてないほど現実味を帯びてきた中、ラッパーのキラー・マイクが全米ライフル協会の支持を表明した。

2018年3月24日にロサンゼルスで行われたMarch for Our Livesデモが終盤に差しかかった頃、Black Lives Matter Youth Vanguardに所属する5人の黒人の子どもたちが、市庁舎前に設置されたステージに登壇した。イベントが始まってから3時間が経ち、日はまだ高かった。グランド・パークにひしめき合っていた熱気のある人々の姿もまばらになり、遠くの方から「主はあなたがたを愛す 悔い改めよ」を主張する男がメガフォンで、“銃が人々を殺すのではない”と語り続けるのが聴こえる。それでもステージ上の活動家たちは、そんな声をかき消すほど大きな喝采を浴びていた。特に、最後に登場したアーメド・アブドゥラが、自分は8歳だと堂々と自己紹介した時の歓声はすごかった。

生まれつき犯罪者扱いされてきた黒人の生活を、韻を踏んだ勢いのあるスピーチで訴える若きBlack Lives Matterの活動家たちに、集まった人々は声援を送り続けた。5人の中で最年長の14歳の少女タンディ・アブドゥラは、詩を一気に読み上げ、「銃規制について話し合うことは大切なこと。街角で銃撃され学校で標的となり続ける黒人の地位を向上させるのは大切なこと」と声の限りに呼びかけた。彼女はさらに、警官やジョージ・ジマーマンのような人間による銃の犠牲となったアフリカ系アメリカ人の名前を列挙し、アフリカ系やその他の有色人種のアメリカ人が直面する不合理な危険のために、今日ここでそれらの人々の声を代弁しなければならない、と主張した。我々が耳にした黒人少女の主張は、「ブラック」という言葉が3つの音節を持つかのように極めてはっきりとしていた。

同じ日の早い時間、ワシントンDCでも我々は同様の主張を聴いた。バージニア州アレクサンドリアから来た11歳の少女ナオミ・ワドラーの話す、銃規制論争にまつわる黒人の報道されていない真実は、デモへ集まった人々に衝撃を与えた。3月14日、彼女の小学校では、パークランドでの17名の犠牲者に加え、1週間前にアラバマ州バーミンガムの高校で銃撃を受けて死亡した黒人の高校生カートリン・アーリントンを偲んで、1分間加えた18分間の抗議活動を実施した。「全国紙の一面を飾ることもなく、夜のニュースで取り上げられることもないアフリカ系アメリカ人の少女たちの物語について伝え、彼女らの声を届けるために、私はここにいます」とワドラーは述べた。「私は、銃による暴力の被害者であるアフリカ系アメリカ人女性たちの声を代弁しています。彼女たちは、将来性のある明るく美しい女性としてではなく、ただの統計上の数字としか扱われていないのです」

ワドラーやロサンゼルスの若き活動家たちによる、パークランド事件の生存者や遺族を念頭に置いた主張は、変革を求め、急激に盛り上がる抗議活動全体に共鳴してきた明快な呼びかけを反映したものだった。活動を支えるティーンエイジのリーダーたちは、銃による暴力に関するあらゆる話題の裏にある大きなプレッシャーを意識し、一体感を大切にしてきた。少女たちの主張や彼女たちに対する群衆からの歓声を聞くと、一瞬、ファーガソンなどの都市で起きた公民権運動の再来かと思える。当時のBlack Lives Matterデモ活動には、白人も参加していた。長年に渡り多くの活動家が、アメリカの白人にも街でのデモ活動に加わるよう呼びかけてきた。その意味で3月24日は、市民の奇跡の始まりのようだった。

集会が終わった直後に市庁舎から離れると、携帯電話によるインターネット接続が再開した。バッテリーが切れる直前、私はキラー・マイクの行動を知った。

アトランタ出身のラッパーは、全米ライフル協会の放送網NRATV向けの番組を事前収録していた。番組内で彼は、銃を所有する権利を強く主張した。同ビデオは、デモ活動が行われている最中に公開された。激しいヒップホップの2人組ラン・ザ・ジュエルズのメンバーであるキラー・マイクは、NRATVのホストであるコリンズ・イヤーレ・アイデヘン・Jr(同じく黒人で、ステージネームは“コリン・ノアール”)との対談を収録した。番組の冒頭でアイデヘンは、デモ活動のオーガナイザーたちを直接的に挑発した。「お前らは何のために行進しているんだ?」と言うホストは、デモのイベント名からその意味を汲み取れなかったようだ。「俺から見るとお前らは、憲法を焼き捨て、気に入らない条文をクレヨンで書き直すために行進しているようだ」 アイデヘンの陳腐で退屈な話が、その後の対談の方向性を決めた。アイデヘンとマイクはどちらも、銃規制を主張する黒人たちの“社会問題の認識”を疑問視し、国内の各都市でデモに参加した人々を見下す態度を取った。対談というよりはNRAのプロパガンダといった内容だった。NRAは、刑事司法制度の外にある間違いなく最も有力な政治団体で、一貫して、(彼らにとって)都合の悪い銃による黒人の犠牲を社会的に受容するような雰囲気作りに努めている。

Translation by Smokva Tokyo

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