環ROY「ラップをきっかけに知った見方と対話の重要性」:80年代生まれの焦燥と挑戦

「どうにかするにはやっぱり対話なのかなって思っています」

ー今見えているものが当たり前ではないという前提があるからこそ、環さんは対話を通した可能性を常に探っている?

環ROY:とはいっても他者との共存ってほんとに難しいですよね。例えば川がそばにある陽当たりのよい場所に住んでいたとして、そこに誰かが来て俺も住みたいって言われたら、究極的には戦うことにはなっちゃうと思うんです。戦争ってそういうことですよね。でもそこで戦わずに話し合いで解決できないかって人は頑張ってきたと思うんです。けど、やっぱりなかなかうまくいかない。でも、どうにかするにはやっぱり対話なのかなって思っています。対話の可能性を信じるというか。

ー最後に一つ。2011年の東日本大震災以降で変わったことが環さんの中であれば教えてください。

環ROY:どうでしょうね。変わったといえばガラッと変わった気もしますし、結局ラップを今も続けているわけだから変わらないと言えば変わらないと思います。ただここ数年は、個人的な感情で直接的な歌詞を書かないようにしようと思っていました。エモーショナルじゃない表現を目指すようになったというか。声は人間の身体から直接出るものなので、音色やリズムの取り方、選ぶ言葉で勝手に自我とか個性が立ち現れてくると思うんです。だからさらに主張とか感情とかを載せてしまうとデコラティブかなって考えていました。たぶん、年齢的なこともあると思います。けど次の作品への取り組みでまた変化していくかもしれないです。


環ROY
1981年、宮城県生まれ。2003年頃からミュージシャンとして活動を開始し、主にラップを用いた音楽作品の制作を行う。2017年には通算5枚目のアルバム『なぎ』をリリースしたほか、パフォーマンス作品「オリガミ」を富山県美術館にて発表。これまでにさまざまな音楽祭への出演、インスタレーション作品、映画音楽、広告音楽などを多数制作。蓮沼執太フィル、サカナクション、U-zhaan、鎮座DOPENESS、Taquwami、OBKRらとのコラボレーションも活発に行っている。
http://www.tamakiroy.com/


『なぎ』
AWDR/LR2
発売中



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