ゴルフコースで出会った2人のカナダ人がフレデリックの人気曲をカバーするまで

─今回のライヴで、フレデリック「オドループ」のカバーをしていました。やってみてどうでした?

アシュリー:楽しかった。基本的にメロディ狂なので、やっててめっちゃハイになったよ(笑)。僕はティーンエイジャーの頃はヒップホップ・グループにいて、抽象的な表現のリリックを書いていた。普通の曲だと制約が多すぎて、自分のやりたいことがうまく表現できないと思ってたんだよね。でも、そのうちに自分がメロディ中毒ってことに気づいてさ。だんだん今のスタイルになった。僕の頭の中には作りかけのメロディがたくさん詰まっているんだけど、「オドループ」を聴いた瞬間「あ、これは融合できる!」って思ったんだよね。

ジェイソン:とにかく「オドループ」はフックが最高。(口ずさみながら)めっちゃキャッチーだよね。カナダで演奏したときも、みんな日本語で歌ってくれたよ(笑)。“踊ってない夜を知らない 踊ってない夜が気に入らない”は、サビの歌詞は、まさにUSSの本質だよ。オーディエンスが踊ってくれなかったら、僕ら仕事になってなかったということだから。

アシュリー:僕は以前、建築現場や工場で働いていたんだけど、そういうところで働いている人たちにとっての音楽って、ある意味ではカタルシスを求めるものだったり、セラピー的な役割を持つものだったりすると思うんだよね。決して評論家が分析的に語るようなものじゃなくてさ。

─なるほど。

アシュリー:僕らは音楽を、良いとか悪いとか、聖なるものか俗なるものかとか、そういうわけ隔てすることなく、好きなものをやっていた。でも、徐々に注目されるようになり、色んなところから意見が聞こえてくると、ちょっと自分のやっていることに「迷い」が生じた時期もあったんだよね。紆余曲折あり、最近になってようやく自信を取り戻してきたかな?という感じ。なので、これから作るものは、ある意味では「新たなる目覚め」というか。「自分を信頼する能力」を得た上での作品になっていくんじゃないかな。

─確かに、昨日のライヴを観た限りでは音源と全然違うなと思ったんですよね。非常にシンプルでアグレッシヴで。その感じは、今後の作品にもフィードバックされそうですか?

アシュリー:説明が難しいのだけど、都市生活が長くなると、自然の生命力や野生とのつながりがだんだんなくなっていくよね。そんななかで僕らは「内なる野生」というものに、再び触れようとしているのかもしれない。例えば、実際に木に触れてみると、気持ちいいだけじゃなくて、汚かったりベタベタしてたりするものじゃない? そこに、さらに手を突っ込んでいくような感じかな。

─危険と隣り合わせ、みたいな。

アシュリー:本来の野生って、そういうものだと思うんだ。僕らが住んでいる都会というのはすごくクリーンで、きちんと整理されてて。刺激を追求すればするほど味気ない世の中になっている。最近の、コンピュータで作る音楽って全てそっちに行っている気がするんだ。それは、僕らの本質とは違う。僕らもコンピュータを使うけど、そういうベクトルとは違うものを作るために野生が必要で。そこをどうバランス取って作っていくかが今後の僕らの課題だと思う。

─お話を聞いていると、ジェイソンはとても理路整然とした話し方をするし、アシュリーは独特な比喩を多用して詩的な話し方をする。さっきも言ったように、全然違うタイプの表現者ですよね。最後に、それぞれがもっとも尊敬するというか、手本にしている表現者を一人挙げるとしたら誰なのかを教えてもらえますか?

ジェイソン:ヒップホップ・グループのギャングスターかな。僕らは90年代のヒップホップを聴いて育ったからね。サンプリングミュージックやDJの黄金時代だ。昔のブレイクビーツを心から愛しているし、ターンテーブルでレコードをスピンし、そこにリリックを乗せれば音楽が成立するっていうシンプルさが全てだと思う。僕らのつながりも、そこから始まっているしね。

アシュリー:僕はオール・ダーティー・バスタードがいた頃のウータン・クランのかな。あと『メロウ・ゴールド』の頃のベック、『モーニング・グローリー』の頃のオアシス。『ネヴァーマインド』の頃のニルヴァーナ。それから……あれ? 一つじゃなくなっちゃったね、ごめん!(笑) でも、『メロウ・ゴールド』と『ネヴァーマインド』をミックスした音楽を作りたいというのが、USSの原点だね。


「ODDLOOP(オドループ)」
USS
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