ツタロックフェスの仕掛け人と兵庫慎司が語る「邦楽ロックの現場で起きてること」

写真左が「ツタロックフェス」のプロデューサーを務める前田博章、右が音楽ライターの兵庫慎司



前田:あとBEASTIE BOYSとかも入ってる気がする。でもほんと減りましたよね、洋楽ロックがルーツのバンド。

兵庫:まあ、こうなるのもしかたないとも思うけど。

前田:今、日本の洋楽の状況って、海外とは完全に分断されちゃっていますしね。

兵庫:それも大きいし、今海外ではロックが弱体化している、ヒップホップやEDMに負けてるっていうのも大きいよね。たとえばThe Mirrazって、最初はまんまArctic Monkeysだったじゃない? The Telephonesがディスコ・パンク直撃の音で登場したのもそうだし。でも今、ああいう洋楽のロック・バンドとか、ムーブメントってないもんね。

前田:確かに。でも男の子も、いい新人バンドがいくつも……たとえば、tetoってどうですか?

兵庫:ああ、好きですね。でも、けっこう前からいない?

前田:前からいるけど、ここ半年くらいの間に急に注目度が上がった感じが。で、ライブもよくなったし。ギアが入ったというか。

兵庫:ちょっと前からいるけど最近特に注目度アップ、っていうのだと、AGE FACTORYもそうですよね。

前田:あと、CDショップの目線で言うと、お客さんの嗜好も、以前とはかなり変わって来た気がします。ジャンル買いっていうか、「これが好きな人はこれも好きなんじゃない?」っていうの、あるじゃないですか。

兵庫:Amazonのおすすめ的な。

前田:そうそう。それがだんだん効かなくなって来た実感があるんですよね。だから、店としては、ジャンルとかじゃなくて、その単体のバンドのCDをいかに売るか、みたいな発想になっていく。

兵庫:ごく限られた好きなバンドしか聴かないっていうこと?

前田:いや、それがそうでもないんです。いろいろ聴くし、いろいろ買ってくれるんだけど、1枚ずつジャンルがバラバラだったりするんですよね。

兵庫:あ、それと近いことを感じたのが……たとえば、04 LIMITED SAZABYSとMy Hair is BadとヤバイTシャツ屋さんって、全然違うバンドじゃない?

前田:ああ、でもお客さんは違うものとして聴いてない、ってことでしょ?

兵庫:そうそう。その3つ、どのワンマンに行っても、お客さん、着ているものも盛り上がり方も同じなんだよね。でもあれはいいことのような気がする。聴き方に変なカテゴライズがなくて柔軟というか。俺らの世代よりよっぽど自由に音楽を楽しんでるなあと思う。

前田:そうですね。だから、ジャンルで買わないというか。「10-FEETを買いに来ました。以上!」みたいな。

兵庫:ああ。でもそれ、「10-FEETぐらいじゃないと買わないよ」という可能性もあるよね。

前田:(笑)そうか。他のものはサブスクで聴いて──。

兵庫:そのジャンルのトップクラスで好きなものだけCDも買う、という。

前田:でも、僕らはCD屋さんなんで、そこはあきらめずにやっていきたいんですけどね。だから、逆に言うと、CDショップも書店も、買いに行ったもの以外が目に入ってくる、というのがいいところじゃないですか。

兵庫:Amazonのおすすめは「これ、あなたが好きそうなやつですよ」っていうものを推してくるけど、CDショップだとその外側にあるもの、ほっといたら自分が触れそうにないものも、情報として入ってくるっていうことね。

前田:そうです、そうです。だから、もし本当に今のリスナーの聴き方が、Amazonのおすすめ的なものが通用しない感じになっていっているなら、ショップにはそこの可能性をまだ探れる余地があるのかも、と思っているんですけどね。

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