80年代生まれの焦燥と挑戦:夏目知幸「他では味わえないオリジナリティとクオリティの大切さ」

シャムキャッツの夏目知幸(Photo by Tetsuya Yamakawa)



― オリジナリティとクオリティと広がりを同時に追求できるバランスを探す、という。

夏目 僕自身は、旅に行っても自然とかそんなに興味がなくて。基本的に街とか、クセのある、人が作ったものが好きで興味がある。でも、クセのあるものだけ追求していても広がりは持てない。もっと届けるにはクオリティ面でも人に認めてもらわないといけない。

― そこまで考えるようになったのは、会社にしたからというのも大きいのでは?

夏目 それもあるし、国内外でいろんな人に出会うといろんなケーススタディを知れるというか、学びが大きいんですよね。でもこれは僕たちがかつて憧れていた海外のインディ・ロック・バンド、ディアフーフやベルセバ、スミス、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド——彼らがどんなバンドだったのか、何を言いたかったのかを考えてみると、伝えたいことは共通していて。自分の持っている考えや意見が隣人や大衆とは違っていても、それを捨てなくていいんだってことなんじゃないかなって。そして、同じように捨てなくていいはずだよねって思っている人たちが、今、僕たちのライブに来てくれているんじゃないかなって思うんですよ。

― 日本国内に限らず、きっとそうですよね。

夏目 そうなると、目下の目標は自分たちが日本一のオルタナティヴ・バンドになる、ということ。オルタナティヴって別に“対抗しろ”ってことではなく、ただ、そういった小さい人との違いを捨てなくていいんだって気持ちとかメッセージが、ふわっといろんな人たちに広がればいいと思ってて。それがしっかりできるようになればバンドとしても、バンドを取り巻く環境としてももっと面白くなると思うんですよね。

― そういうスタンスは、日本語で歌っていても伝わるものですか?

夏目 むしろ、日本語で歌うことにこだわらないといけないとも思っていて。3〜4年くらい前によく海外のバンドと日本で一緒に演奏する機会があって、そのときに英語で歌っている日本のバンドがいたりすると「なぜ英語で歌ってるのか」ってみんな言うんですよ。日本語で歌わないと意味なくないか?と。僕もそれは共感するところが多くて、母語じゃないと感情が入っていかないんじゃないかっていうか。逆に、それをきちんとできていれば、小さな感情の機微のような部分、目に見えない部分を音楽に託すことができる。それは日本語が分からなかったとしても通じる部分じゃないかと思うんです。

― 歌詞としての言葉の意味が直接分かる・分からないではない、ということか。夏目さんはもともと言葉にならない感情のようなものを詞にしてみることを試みているようにも感じていたので、今のお話、非常に面白いなと思います。

夏目 だからそこはしっかり、崩さず。ある種、一番大事な気がします。あとはもう、ライブを一回すれば分かるというか、ちゃんと言葉を超えちゃう瞬間というのが味わえるんだ、というのが今持っている実感ですね。

夏目知幸
1985年、千葉県生まれ。メンバー全員が高校3年生のときに地元浦安で結成したロック・バンド、シャムキャッツのVo&Gtを担当。2016年に自主レーベル「TETRA RECORDS」を立ち上げ、2枚のEPを発表したのち、2017年6月に通算4枚目のアルバム『Friends Again』を発表。国内外でツアーを行ったのち、同年12月にニューシングル「このままがいいね」をリリース。弾き語りなどソロ活動も積極的に行っており、個人名義での制作も進めている。
http://siamesecats.jp/


「このままがいいね」
シャムキャッツ
TETRA RECORDS
CD発売中・Apple Music、Spotify、iTunesにて配信中



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