ピンク・フロイド、クイーン、クラプトン、ジェネシスによる幻のチャリティライブを振り返る

1993年にピンク・フロイド、ジェネシス、クイーン、クラプトンによるチャリティ・コンサートが開催された。

1993年に開催されたチャリティ・ショーにはピンク・フロイド、ジェネシス、クイーン、エリック・クラプトンらが参加した。このスーパースターが勢揃いし、完全に忘れ去られた幻のチャリティ・ショー「カウドレイ・ルーインズ・コンサート」を振り返る。

1993年9月18日、よそいきのイブニングウェアに身を包んだ約1,000人の幸運なロックファンが、イングランドのウェスト・サセックスにあるカウドレイ館跡に集結した。彼らは、ピンク・フロイド、クイーン、ジェネシス、エリック・クラプトンらスーパースターによる、一生に一度のコンサートを体験することとなる。コンサートは、ミドハーストにあるキングエドワード7世病院へのチャリティも兼ねていた。160ポンドを支払ったファンには手の込んだディナーが振る舞われ、45ポンドのファンたちは料理を持ち込み、ピクニックを楽しんだ。つまり、招待された幸運な人々全員にとって、信じられないほどお得なイベントだったのだ。

元も注目すべきは、参加したバンドやアーティストが皆、ツアーモードではなかったということ。いつもの彼らであれば、数か月前から入念なリハーサルを重ねなければステージには立っていない。クイーンは、前年に行ったフレディ・マーキュリーの追悼コンサート以降、活動を休止していたし、ジェネシスもまた、ウェイ・ウィ・ウォーク・ツアー後、活動していない。またピンク・フロイドは、アルバム『対/TSUI』の仕上げに忙しかった。しかし最終的に、全員がコンサートへの出演を承諾した。

コンサートのオープニングアクトはクイーン。とはいえメンバーは、ドラムのロジャー・テイラーとベースのジョン・ディーコンだけだった。ギターのブライアン・メイはソロ・ツアーに忙しく、参加しなかった。『カインド・オブ・マジック』、『ブレイク・フリー(自由への旅立ち)』、『ウィ・ウィル・ロック・ユー』、『レディオ・ガ・ガ』、『輝ける日々』はテイラーがヴォーカルを担当し、『地獄へ道づれ』にはポール・ヤングが飛び入りした。

「僕は、クイーンへの熱い想いを満たすために思い切ったことをした」と、あるファンがクイーンのファン雑誌『プリンシス・オブ・ザ・ユニヴァース』で告白している。「フィールドに立つために80ポンド(約1万2000円)を払い、ディナースーツにボウタイで決めるなんて、究極の馬鹿者だ。でも、ミスター・ディーコンのレアな姿を拝めるのなら、そんな犠牲は喜んで払ってもよかった」という。テイラーとディーコンの2人のみでクイーンを名乗ってプレイしたのは、この時が最初で最後だった。しかもディーコンのプレイを公の場で見られたのは、このコンサートと、その後にもう一度きりだった。

次はロジャー・テイラーをドラムに迎えたジェネシスで、『ターン・イット・オン・アゲイン』、『ホールド・オン・マイ・ハート』、『アイ・キャント・ダンス』、『インヴィジブル・タッチ』を披露した。後にフィル・コリンズは「あの時は人生の中でも極めて重要な時期だった」と当時を振り返っている。彼はコンサートへ出演するために、ソロ・アルバム『ボース・サイズ・オブ・ザ・ストーリー』の作業を中断せざるを得なかった。同アルバムに収録された一連の曲は、彼の結婚生活の破綻をテーマにした極めて個人的な内容だった。『アイ・キャント・ダンス』でおどけて見せても笑えなかった。彼はそれから3年後にバンドからの脱退を表明したが、2007年のツアーで復活するまで、このコンサートがバンドとの最後の共演だった。

Translation by Smokva Tokyo

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