ビートルズのインド訪問50周年、あなたが知らない16の歴史的トリビア

3.僧院での生活はサマーキャンプのようだった。

タバコ王の娘でアメリカ人富豪のドリス・デュークからの寄付金10万ドルで、マハリシの僧院は14エーカー(約57,000平方メートル)の森の中に1963年に建築された。サルツマンの言葉を借りると、この寺院には6つの長いバンガローがあり、それぞれにダブルベッド付きの部屋が5〜6部屋あったという。また、満開の赤いハイビスカスが植えてある花壇と幾つもの菜園もあった。さらに、マハリシの住居であるバンガローに加えて、郵便局、レクチャー用の劇場、スイミングプールが併設されていた。ビートルズの到着前に彼らの宿泊準備を指揮したのがナンシー・クック・デ・エレーラだった。後に彼女がこう語っている。「ビートルズは自分たちの部屋に入っても、どれだけの準備がなされたのか全く気づかなかった。彼らのベッドにはマットレスがあったし、私たちがこの手でカーテンと鏡を設置した。トイレの部品も交換して使えるようにした」 シンシア・レノンは、彼女とジョンが泊まった部屋には四柱式寝台と電気ヒーター、椅子が数脚あったと回想している。

『ビートルズ・アンソロジー』の中で、マッカートニーはリシーケシでの体験や滞在をサマーキャンプになぞらえている。「朝に起きて、食堂に行ってみんなで朝食をとる。食べ物はベジタリアン食だったし、たぶんコーンフレークも食べたと思う。朝食が済むと自分の部屋に戻って少しの間瞑想する。その後で軽く昼食をとって、昼食後にトークや音楽のイベントが行われる。基本的に毎日食べる・寝る・瞑想するだけで、時々マハリシが短い講義を行う」

マイク・ラヴは自身の回顧録『Good Vibrations: My Life as a Beach Boy』で、僧院の周囲に生息する生物も自由に僧院に入ってきたと述べている。「クモ、迷い犬、トラがうろついていたこともあった。夜に聞こえるのは野生動物のけたたましい鳴き声の合唱だ。クジャク、カラス、オウムなどのうめき声や鳴き声に神経が参った人もいると思うけど、僕は穏やかな気持ちになった」

日が暮れると、ミュージシャンたちは一緒に音楽を演奏した。ドノヴァンが自伝『The Autobiography of Donovan: The Hurdy Gurdy Man』でこう述べている。「曲作りは本当に簡単だった。ポール・マックはいつもギターを抱えていた。彼は僕たち全員と2〜3曲一緒にプレイしていた。その成果は、この旅行の後で発売された彼らの『ホワイト・アルバム』と僕のアルバム『The Hurdy Gurdy Man』で聴くことができる」

4.マハリシには独特の奇行があった。

信奉者たちが最初に思い描いていた人物像とは異なり、マハリシはビジネス重視でメディア露出の効果を巧みに利用していた。エプスタインのアシスタントだったピーター・ブラウンの著書『The Love You Make』 によると、ビートルズのインド旅行に先立って、マハリシは弁護士を通してABCと特別番組の制作を交渉していた。その番組にはビートルズも出演することになっていた。ブラウンはマハリシにそれは無理な話と忠告したにもかかわらず、マハリシはABCの弁護士に番組制作は可能だと言い続けた。最終的にブラウンがハリソンとマッカートニーを従えてスウェーデンに滞在していたマハリシを訪問して、マハリシのビジネスのためにビートルズを利用しないように警告したのだが、その時マハリシは頷きながらクスクスと笑ったのである。スウェーデンからイギリスに戻る飛行機の中でハリソンが言ったことが、ブラウンの本で引用されている。すなわち「マハリシは現代人じゃない。彼はこういう事柄を理解できないんだ」と。

ルイス・ラップハムは著書『With The Beatles』の中で、マハリシがビートルズのメンバーを含む弟子たちとのグループ写真を撮影した時のことを詳しく述べている。ラップハムはマハリシを「まるで映画の撮影セットにいる映画監督のように振る舞った」と描写。撮影の準備中に、マハリシは弟子が座る階段式の見物席の設置を監督し、弟子の席順を指示した。そしてフォトグラファーに「シャッターを切る前に1、2、3と言ってくれ。その後でシャッターを切って、叫ぶように」と指示したと言われている。その後、マハリシは弟子たちに向かって「さあ、みんな来て、宇宙とつながる微笑みで、レンズを見るように」と言った。

ラップハムは本の中で、マハリシはヘリコプターが大好きで「まるで精巧に出来た巨大なオモチャを見る子供のような目で凝視していた」と回想している。マッカートニーは、マハリシが彼をニューデリーに移動させるためにヘリコプターを使ったことを思い出した。空席が一つあり、その席にレノンが座って一緒に移動したのである。『ビートルズ・アンソロジー』でマッカートニーがこう述べている。「後でジョンに『何故あれほど熱心にマハリシとヘリコプターに同乗しようとしたのか?』と聞いたら、ジョンが『正直に言うと、彼がこっそり答えを教えてくれると思ったんだ』と答えた。本当にジョンらしい!」 また、同著の中で、マハリシがどんな車を買いたいかと聞いてきた時の会話も回想している。「僕たちは『メルセデスだよ、マハリシ。メルセデスはとてもいい車だよ』と答えた。彼が『実用的か? 燃費はいいのか? 性能はいいのか?』と聞いてきたから、『ああ』と返答したら、彼は『じゃあ、私たちはマルセデスを1台買わないとダメだな』と言ったんだよ」

Translated by Miki Nakayama

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