ビートルズ、パブ・バンド時代のレア音源、その魅力とは?

若き日のファブ・フォー(Photo by K & K Ulf Kruger OHG/Redferns)


同作に収録されたパフォーマンスが行われた日程ははっきりしていないが(大晦日である可能性が高いと言われている)、バンドの元マネージャーであり、彼らのハンブルクでの最初のショーをアレンジしたアラン・ウィリアムズは、同作には3日間か4日間にわたって披露されたパフォーマンスが混在していると主張している。ビートルズの可能性に目をつけていたザ・ドミノズのリーダー、テッド・「キングサイズ」・テイラーは、スター・クラブのステージマネージャーだったエイドリアン・バーバーに、彼らのパフォーマンスを録音するように要請していたのだった。2000席を誇る劇場のスター・クラブは、ハンブルクではよく知られた会場であり、1960年の8月にバンドが初のハンブルク公演を行ったインドラ・クラブよりはずっと豪華だった。

同作の著作権問題は複雑だった。というのは、テイラーがメンバーたちに好きなだけビールを飲ませることを条件にレコーディングを許可するという内容の文書に、ジョン・レノンがサインしてしまっていたからだ。(そのいい加減なやりとりが毎晩行われていたのかどうかは定かではない)

ビートルズ人気の爆発に便乗しようとしたテイラーは、その音源は春先に録音されたものであるため、その後にバンドが契約したパーロフォンに著作権はないと主張した。しかし楽曲が制作された時期と、音源に収録されていたメンバーの会話内容から、その主張が虚偽であることが証明された。ジョージ・ハリスンは後にこう語っている。「酔っ払いどもの演奏を酔っ払いが録音したものに、法的拘束力なんてあるわけないだろ」

それでも同作が、かつてビートルズが世界最高のパブ・バンドだったことを物語っているのは確かだ。対バンをおののかせるほどのハードなロックンローラーたち、それがビートルズの出発点だった。



そのテープには33曲が収録されている。テイラーはレノンのすぐそばに、Grundigのテープリールレコーダーを設置していた。彼のリズムギターがバンドのエッジを体現していると判断したためだ。『ロール・オーバー・ベートーヴェン』『ヒッピー・ヒッピー・シェイク』『マッチボックス』等のコードを押さえる左手は、リッケンバッカーのフレットボードを絶え間なく行き来した。レノンが歌うカール・パーキンスのカバー『マッチボックス』は、ビッグ・ビル・ブルーンジー譲りのスキッフル調のリズム感と、アーサー・アレクサンダーのB面曲を融合させたかのような、ビートルズによるカバーの中でも珠玉の出来となっている。

その音質がお粗末であることは言うまでもないだろう。1960年代半ば、テイラーはその音源をブライアン・エプスタインに売ろうとしたが、その商品価値がゼロに等しいと考えた彼が提示した額はわずか20ポンドだった。そして1972年、抜け目のないアラン・ウィリアムズは、廃棄寸前だったオフィスのガラクタの山の中からそのテープを発見したと触れ回った。

Translated by Masaaki Yoshida

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