ケヴィン・シールズ日本独占インタビュー前編、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが提示する「新たな音響体験」の真相

ケヴィン・シールズ、2013年2月のマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン大阪公演にて(Photo by Takanori Kuroda)


アナログが持つ質感を「過去のもの」にはしたくなかった

─「全てのプロセスをアナログで行なった」というと、2013年の『m b v』でのアナログ・レコーディングを思い出します。あのアルバムが上手くいったことも、今回のプロジェクトに大きな影響を与えていますか?

ケヴィン その通り。あのアルバムの時点では今回用いたテクニックは開発されていなかったんだけど、今回のアナログリマスター・プロジェクトで一緒に作業をしてくれた(エンジニアの)アンディ・セイヴァースが、さっき話したPro Toolsによる「メジャーメント・システム」を、あの段階で導入していた。だから、それが可能だというのがあの時点で見えていたのは大きかったのかもしれないね。



─あなたはなぜ、そこまでアナログにこだわるのでしょう。というのも以前、90年代にデジタルファイルからリミックスするという仕事をやり過ぎて、デジタルに辟易したのが大きいと話していたので、そのことも詳しく聞きたかったんです。


ケヴィン それも理由の1つではあるね。でも、「アナログ・リマスターに取り掛かろう」と僕に決心させた大きな動機は、やっぱり『m b v』のレコーディング(1997年)に遡る。あの時点ではまだ、Pro Toolsで「トライしてみる」程度のことだったけど、「Pro Toolsでギターの音を録る」という方法も、まあやってはみたんだよ、1996年、1997年というのは、テープに録ってみたり、それをPro Toolsに落としてみたり色々やった。もしかして、あの時点で今回のアナログ変換でやったような 「メジャーメント・システム」が確立していたら、すごく効率的だったと思うけど、残念ながらあのアルバム制作の時点でやったPro Toolsの使い方では、自分の納得いくようなサウンドには到底仕上がらなかった。なぜかは分からないけど、あの時は無理だったんだ。

─なるほど。

ケヴィン それと、僕が思っているデジタルのイメージだけど、デジタルが嫌いというわけでは決してない。だからこそCDも作るし(笑)、ダウンロード配信もしている。デジタルならではの利点があるだけでなく、ある意味では「デジタルならではの正しい音」というものもあるとは思うんだ。ただ、アナログが持つ質感、アナログが持っている情報っていうのは、デジタルとは明らかに何かが違ってる。すごくパワフルな部分もあって、僕はそれを「過去のもの」として、なかったことには出来ないんだよね。

─ということは、2012年にリリースしたデジタル・リマスターと、今回出すアナログ・リマスターの2枚、どちらが「正しい音」で、どちらが「間違った音」という話ではなく、どちらのヴァージョンも「正解」と考えていいんでしょうかね?

ケヴィン その通りだよ。

Translated by Kazumi Someya

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