故ドロレス・オリオーダン「音楽に救われた」46年の生涯

離婚後、彼女はニューヨークに移り住み、新しいバンドD.A.R.K.と活動を始めた。このバンドには元ザ・スミスのベーシスト、アンディ・ルーク(彼は彼女の才能を“息をのむほど凄い”と呼ぶ)、のちにオリオーダンの人生のパートナーとなったDJのオーリー・コレツキー(Olé Koretsky)がいる。彼らの2016年のデビュー・アルバム『Science Agrees』はオリオーダンの声を新たなフィールドのエレクトロニカへと導いた。しかし、彼女がクランベリーズを完全に捨てることはなかったのである。2017年、新作『Something Else』をリリース。これはアンプラグドでオーケストラと演奏した新旧の楽曲を集めたアルバムだ。このアルバムの宣伝を兼ねたBBCのインタビューで、オリオーダンは「ここ数年、健康に問題を抱えているの」と認めている。「一番の問題が長年ギターを弾き続けてきたことが原因の背中から腰の痛みで、それ以外の問題もあってツアーをキャンセルせざるを得なくなった」とホーガンが説明してくれた。「彼女は背中と腰を治すために出来る限りのことをしたんだよ。でも治らなくて、最後にはドロレスの命まで奪われた」





亡くなる前日にオリオーダンはロンドンに到着した(ある情報筋はニューヨークからダブリンに飛び、しばらく滞在した後にロンドンに移動したと伝えている)。ロンドンでは仕事が手招きしながら待っていた。彼女はミュージシャン兼レコード・プロデューサーのユース(=マーティン・グローヴァー)に会って完成間近のD.A.R.K.のセカンド・アルバムの話し合いを行い、LAのメタル・バンドBad Wolvesが演奏する「ゾンビ」の新バージョンのために彼女のヴォーカルを録音する予定だった。

1月15日の深夜過ぎ、オリオーダンはEleven Seven Label Groupのダン・ウェイトに留守番メッセージを2つ残している。ウェイトはBad Wolvesとオリオーダンを結び付けた張本人だ(彼は2000年代初頭にもクランベリーズと仕事をしていた)。彼女が残したメッセージで、母親らしいうれしそうな声で子どもたちの様子や、エミネムが使った「ゾンビ」のサンプルに子どもたちがどれだけ興奮しているかを話し、ザ・ヴァーヴの「ビター・スウィート・シンフォニー」の一説を歌っていた。「彼女は上機嫌だった」とウェイトが続けた。「彼女が落ち込んでいたという報道を幾つか見たけど、少なくとも彼女はその先の計画を立てていたよ」。その中にはウェイトと彼の妻との会食も含まれていた。

24日、オリオーダンは故郷のリマリックで埋葬された。


Translated by Miki Nakayama

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