エアロスミスのジョー・ペリー、ソロ作発売記念ライブで思わずギターを破壊

新作はブルース・ウィトキンとの共同プロデュースで制作されたが、1970年代にエアロスミスのキャリアを決定付けたアルバムのプロデューサーだったジャック・ダグラスにも、折に触れて意見を求めていたという。制作の後半になって、ペリーの息子たち、DJのローマン・ペリーとミュージシャン兼プロデューサーのトニー・ペリー(この作品のミキシングを担当)が加わった。「俺は椅子に腰掛けて息子たちの話を聞いていたよ」とペリーが思い出す。「ギターの曲芸的なプレイを聞きたいヤツなんて今はいない。曲が一番という時代に戻ったのさ。これは子どもたちに教えられたよ」

このアルバム発売記念ライブはジョー・ペリー&フレンズとして開催され、ジャラジャラしたチェーン、スカーフ、タキシードジャケット、黒いサングラス、真っ白い毛束でアクセントをつけた豊かな黒髪というクラシックなロックンローラーの出で立ちのペリーが登場した。ストーン・テンプル・パイロットのディーン&ロバート・ディレオ兄弟がそれぞれギターとベースを担当し、ライブ後半にはジョニー・デップがリズム・ギターで参加した(デップはペリーがアリス・クーパーと組んでいるハリウッド・ヴァンパイアーズのメンバーでもある)。

エアロスミスの楽曲を演奏するセットでタイラーの代役を務めたのがエクストリームのヴォーカリスト、ゲイリー・シャローンで、ボロボロのスカーフとヘアバンドを着用して登場した。数曲演奏した後、ペリーがマイクに近づき「これからしばらくはエアロスミスの曲はやらないぞ!」と叫んだ。

これが合図のように、バンドは新作アルバムの曲を演奏し始めた。まず、怒れる愛の嘆きを歌った、ダークでブルージーな曲「I’II Do Happiness」をリードが弾き始めた。この夜のサウンドは力強く、適度な粗さを残したものだった。「Won’t Let Me Go」では、ディレオ兄弟の奏でる強烈なリズムを振り払い、ペリーの泣きのソロが空間を占拠した。

完全に本気の演奏ではあったが、凝りすぎることなく、時として自宅の居間でジャム・セッションを行っているような気楽さも見られた。「Fortunate One」では髭面のブラック・クロウズのヴォーカル、クリス・ロビンソンが元気よく登場したが、あっという間に曲が終わってしまったと感じたペリーは直後に「もう一回やらないか?」と自らアンコールを要求し、2回続けて演奏することになった。

ロビンソンがこのアルバムに参加したのは完成間近で、CDは既にマスタリングにまわされていた。そのため、彼の曲はアルバムのデラックス・アナログ盤にのみ収録されるボーナス・トラックとなった。

パリパリに糊の効いた白シャツに身を包んで登場したデヴィッド・ヨハンセンは、舌鼓を打ってしまうほど味わい深い声で「I Wanna Roll」を歌い、「I’m Going Crazy」ではブルースハープを披露した。さらに子どもの頃のペリーを知っていると冗談交じりのMCを始め、「ジョーは母親に『母さん、大人になったら俺はミュージシャンになる』と言ったのさ。そしたら母親は『ジョーイ、大人になるか、ミュージシャンになるか、どちらかに決めなさい。両方は無理よ』と言ったんだぜ」と続けたのである。

インスト曲『Spanish Sushi』でペリーのギターはノイジーさを増し、瞑想的な雰囲気になった。稲妻のようなビートでこれをサポートしたのがドラマーのデヴィッド・グッドスタイン。また、観客席にはキッスのジーン・シモンズ、ZZトップのビリー・ギボンズ、ガンズ・アンド・ローゼズのベテラン勢ダフ・マッケイガンとマット・ソーラムがいた。

ライブの終盤に近づくとロビン・ザンダーが登場し、アナログ盤のみ収録の「Countryside Boulevard」を含む2曲で、ヒリヒリするような声でメロディックなヴォーカルを披露した。アンコールでは、ステージに戻ったザンダーがビートルズの「Come Together」」の冒頭の歌詞を叫び、リードとロビンソンがそれぞれ加わった後、ペリーの白熱したリードに主役の座を明け渡した。

1月下旬にはハリウッド・ヴァンパイアーズの新作のレコーディングを開始し、公演日は飛び飛びだがこのバンドでのアメリカ国内ツアーが5月と6月に決まっていると、ペリーが教えてくれた。また、エアロスミスは結成38周年となり、ペリーが新作を作ろうとしつこく言い続けているため、2018年後半にツアーを行う可能性が高いとのことだ。

そんな多忙なスケジュールの合間に、ペリーは今回のSweetzerlandバンドでまたソロ・ライブを行いたいと思っていると言う。「このラインナップでやるかもしれないし、やらないかもしれない。俺はやりたいよ」とロキシーでのライブの興奮が覚めやらないペリーが言う。「とにかく、みんなが俺と同じくらい楽しんでくれたらいいと思うだけさ」




Translated by Miki Nakayama

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