エミネムがすべてをさらけ出す、新作『リバイバル』全曲解説

3.「クロラセプティック」 feat. フレッシャー

『リバイバル』のトラックリストを目にしたファンの多くは、同作における唯一のゲストMCがブルックリンのフレッシャーであることに驚いたに違いない。約1年前に「ウェイト・ア・ミニット」がヒットし、レミー・マ、リフ・ラフ、50セント等によるリミックスによってその名を轟かせたニューヨークの若きMCの参加は、エミネムの盟友ロイス・ダ・ファイブ・ナインによる同曲のリミックスがきっかけだったのだろう。「世に唾を吐きかけ、喉元をかっ切ろうとするようなレコードさ」フレッシャーはコンプレックス誌にそう話している。「とんでもなくリアルだぜ」

エミネムが自身を「ラップ界のサイモン・カウエル」と称する同曲では、「俺はスクーリー・D、お前は所詮スプーニー・G」というパンチラインや、「ロクでもないライム」がびっしり書かれたノートのワイヤーで人を殺める方法など、彼の攻撃的な面が強調されている。デナウン・ポーター(D-12のメンバー、コン・アーティスとして知られる)による荒ぶるビートは、エネルギッシュでタフな彼の一面を存分に引き出している。

4.「アンタッチャブル」

BETヒップホップ・アウォードでのエミネムによるトランプ批判が気に食わなかった保守寄りのファンは、この曲の内容に顔をしかめるに違いない。6分に及ぶエミネム史上最も政治的なこの曲で、彼は自身が15年前に「ホワイト・アメリカ」で浮き彫りにした、アメリカにおける人種差別問題をより深く掘り下げてみせる。この曲の前半部分は、黒人のコミュニティを弾圧しようとする白人史上主義の警察官の視点で語られる。長年のコラボレーターであるミスター・ポーター、エミール・ヘイニー、マーク・バトソン等がプロデュースを手掛けた、サンプリングされたギターが印象的な同曲におけるこの部分は、ジェイ・Zの「99プロブレムス」の2番目のヴァースに対する州警察からの回答のような内容となっている。
後半部ではビートがピアノのループに置き換えられ、2017年のアメリカに生きる黒人の視点が綴られる。警察による暴力、人種差別、雇用における偏見、あからさまな偽善行為等、エミネムは組織ぐるみで行われている差別を徹底的に糾弾してみせる。“共和党支持者は話にならない / 俺たちは自力で困難を乗り越えてみせる / 止められるもんなら止めてみろ”。議論を呼んだこの曲に対する反応は、今のところラップの世界においても大きく分かれている。

5.「リヴァー」feat. エド・シーラン

エド・シーランによると、「リヴァー」の大部分がレコーディングされたのは2016年3月で、当時彼はラッセル・クロウが所有するオーストラリアの農場に滞在していたという。「ラッセルのホームスタジオを使わせてもらったんだ」。シーランはビルボード誌にそう話している。「ドラムとギターを録って、コーラスを書き、最後にピアノを乗せた。すぐに曲を送ったんだけど、返事は来なかった」。エミール・ヘイニーのプロデュースを経て完成したこの曲で、シーランが自身を「嘘つきでペテン師」と呼ぶ一方で、エミネムは女性と一夜限りの関係を持つことへの罪悪感と、それに伴う非難についてこう綴っている。“一発ヤっちまったらもう用無し / 欲望を満たすために自分の立場を利用したのさ / 俺はうす汚い卑怯者”

6.「リマインド・ミー」(イントロ)
7.「リマインド・ミー」

ハード・ロック調の「リマインド・ミー」が、2013年発表のシングル「バザーク」を思わせるのは、どちらもジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの「アイ・ラヴ・ロックンロール」が元ネタになっているからだろう。ビルボードのトップ3入りを果たした「バザーク」と同様に、この曲でエミネムは豊胸手術によって故アンナ・ニコール・スミス顔負けの巨乳を手に入れた女性との関係を誇らしく語ってみせる。「悪いねおばさん、我慢できなくてさ」彼はそうラップしながらも、侮蔑的な言葉を避けることでスリム・シェイディの女性蔑視とは異なる、セックスの快楽をストレートに表現してみせる。インタビュー・マガジンに掲載されたエルトン・ジョンとのインタビューで、彼は同曲をプロデュースしたリック・ルービンとの関係について語っている。「(ルービンと)曲の制作について話していた時、彼はこう言ったんだ。『私は世間の反応を予想できるほど賢い人間ではないから、ただ自分の直感に従うようにしている』ってね」

Translated by Masaaki Yoshida

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