エリック・クラプトンが語る、薬物依存、クリーム時代、ギターの未来

ー ドキュメンタリーには、B.B.キングの素晴らしい言葉があります。あなたのブルーズ・ソロの弾き方を、「パズルのピースをはめるようだ」と表現しています。

まさに僕の考えている通りだ。僕はまず、最初と最後の部分に余地を残しておく。それは理にかなっていて、全体像が見えてくる。もしスタジオで好きにやらせてもらえるなら、自分がとことん納得するものができるまで何度も何度もやり直す。「いとしのレイラ」がそのいい例で、パズルを組み立てるようだった。

ー パズルは完成しましたか?

絶対に完成することはない。でも、クリーム時代のフィラデルフィアでのライブを思い出すよ。あれは最後のツアー(68年)の終わり近くのことだった。全員がもうバンドは終わりだと感じていたが、プレイすることだけは楽しんでいた。「こんなに素晴らしいプレイは、これ以降できないんじゃないか」と思ったことを覚えている。「満足したことがあるか?」という問いには、その夜は間違いなく「YES」と言えるね。

ー エド・シーランはかつて、あなたに憧れてギターを弾き始めたと発言しています。成功へ向かって努力する彼のような若いアーティストをどう思いますか?

正直言って、何も言うことはないよ(笑) 彼は僕にアドバイスを求めてきた。彼には、「猛スピードで突っ走らないで、スローダウンしなさい」と言ったんだ。でも彼はできるだけ速く進んで、世界を制服したいみたいだ。でもその後はどうする? そこから先はどこを目指す? 誰にとってもうまくいくとは限らない。

ー スターの座についた60年代〜70年代を振り返っていかがですか? セレブであることは考えずに仕事をしてさえいればよかった時代で、音楽を追求できたと思いますが。

自分たちのやっていることを、ビジネスだと思ったことはない。この話をするときはいつもクリームを引き合いに出すのだが、僕らはただ行き先だけを聞かされていた。自分たちがいくら稼いでいるかとか、正しい戦略はどうか、どの都市でコンサートすべきか、など考える暇もなかった。今ではエド・シーランのように、自らがコンサートを製作・監督するようになった。それが音楽の一部になっている。当時の僕たちがやろうとしても、自分たちの音楽の邪魔になっていただろう。

ー あなたを音楽に集中できなくさせるビジネスと距離を置くために、どうしていますか?

毎日僕に何をすべきか指示するビジネスマネージャーを置いている。例えば、クロスローズ(アンティグアにあるクラプトンが設立した依存症治療センター)をどう経営するかとかね。周りの人間には、「一人にしてくれ」とよく言ってきた。僕はギターを弾かなきゃならないからね。なかなか簡単なことではない。自分のプレイを人前で聴かせられるようになるまでには、相当努力が必要だから。

若いときは一人になるのは楽だった。家族や恋人もなく、子どももいなかったし、ビジネスとも関係がなかったから。プレイすることに専念できた。今では、これらすべてのことに関わるのを楽しんでいる。でも、注意散漫になってしまうんだけどね。

ー 以前、ギターの将来について話したことがあります。ギターは、音楽カルチャーの中で言うべきことを主張してきたものだ、という人もいます。表現するためのひとつのツールとして、ギターには未来があると思いますか? また、特にあなたやB.B.やジミ・ヘンドリックスなどのアイコンに立ち向かい、音楽カルチャーの中で独自の声を上げようとしている若きプレイヤーたちをどう思いますか?

つい最近、そんな話をしたばかりだよ。これからどうしたらいいか分からない、という若者と話したんだ。知り合いを辿って僕にコンタクトしてきた若いミュージシャンだった。彼が誠実な人間だということがわかったし、彼がどんな考えを持っているか興味があった。一緒にランチをしているとき、彼が言った。「何か聴いてみたいですか?」 それは難解で抽象的なもので、「どこへ向かって行くんだろう?」って思った。

僕としてはその若者を導いてやりたいと思った。彼は、自分だけの世界に閉じこもって行き詰まっているようだった。いつの時代にも、聴いて手本にすべきギタープレイはあるものさ。ギターは今でも最もフレキシブルな楽器だ。即興でプレイできるし、自由がある。ギターにリミットはないと思う。

ー 勇気づけられる言葉ですね。私もギターが大好きでたまらないんです。

僕もさ(笑)。ギターが廃れたと言う人は、ローバック・ステイプルズ(ステイプル・シンガーズを結成したギタリスト)を聴くといい。過去のものだが、とても感動的だ。どうあるべきか、という話でなく、既にそこにあるものなんだ。それを理解できれば、何でもできるさ。


Translated by Smokva Tokyo

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