ローリングストーン誌が選ぶ「2017年ベスト・メタル・アルバム」20枚

10位 ゴッドフレッシュ『ポスト・セルフ』
Godflesh

インダストロ・メタルの扇動者たちによる8枚目のLPは、成功を収めた1989年の『Streetcleaner』と1992年の『Pure』の閉所恐怖症的な怒りと、フロントマン兼聴覚ファイターであるジャスティン・ブロードリックが2000年代に結成したシューゲイザーな分身イェスーのどことなく愁いを帯びた音を組み合わせている。結果として出来上がったものからは、薄気味悪い絶望感がこれまでで一番クリアに聞こえる。「No Body」で終始流れるドラムマシンは一定のリズムを刻み続け、最後の最後で制御不能な激突へと変貌を遂げて果てる。また、インスト曲「Mortality Sorrow」でのギターは空中に消えてしまうまで不吉さを煽り、「Pre Self」でのノイジーなリフが雑音混じりのノイズの層を積み重ねていき、繰り返されるブロードリックの歯ぎしりにも似た声色にさらなる怒りをまとわせている。

9位 モービッド・エンジェル『キングダムズ・ディスデインド』
Morbid Angel
2011年に四半世紀に及ぶアンダーグラウンドでの活動を記念してリリースした『狂える神々』は、彼らのシグネチャーともいえるデスメタル的虚勢に当時のインダストリアル・ビートを組み合わせたアルバムだった。今作『キングダムズ・ディスデインド』は、バンドリーダーであり唯一のオリジナル・メンバーのトレイ・アザトースの獰猛な罪深さを表しているようだ。2015年、ギタリストのトレイは、当時のフロントマンのデヴィッド・ヴィンセント(現在、彼もモービッド・エンジェル絡みのプロジェクト「I Am Morbid」を率いている)と決別し、ベーシスト兼ボーカリストのスティーヴ・タッカーと再びタッグを組んだ。タッカーは1990年代後半〜2000年代前半の最も荒れた3作品に参加している。タッカーとアザトースは当時の結束を呼び起こし、ブラストビートでドライヴする憤怒のサイクロンを発生させ、そこにアザトースの十八番のヘヴィーで突き刺すようなグルーヴと、エディー・ヴァン・ヘイレンが幻覚を見ながら弾いているようなギターソロが加わる。ヘッドバンガー御用達だった90年代初頭から半ばまでの彼らの音楽にあったダイナミックな雰囲気や、ついつい拳を振り上げてしまうコーラスは姿を消したが、逆にそれがカオスの純粋な激しさを強調している。

8位 ロイヤル・サンダー『Wick』
Royal Thunder
アトランタのロイヤル・サンダー3枚目のフルアルバムの聞き所は多数あるが、ヘヴィーな音を担っている楽器はミニー・パーソンズの声だ。荒々しく、ざらついていて、逞しさもありながら、弱さも優しさも兼ね備えている。他のメンバーはパーソンズの声を真ん中に据えつつ、それに呼応して変化し続ける音を紡ぎ出す。1曲目「Burning Tree」はうねうねしたリフと、タンバリンがアクセントのトランス風パーカッションで展開していく。「We Slipped」はジャングル風のギターのベッドの上で滑るように動いたあと、ストリングスの霞の中で蒸発する。不気味な雰囲気のタイトル曲では、フィードバックのシーツの上に気の抜けた音と歪んだパワーコードを並置している。そして、ゆっくりと燃える「Plans」では、クリーンにかき鳴らされるギター、天使のようなバックコーラスの歌声、エアリーでありつつヘヴィーに響くドラムという要素すべてが、パーソンズの情熱的な高音をサポートしている。彼らはメタルとは呼べないかもしれない。だが、ロイヤル・サンダー『の音は紛れもなくヘヴィーだ。



7位 オックスボウ『Thin Black Duke』
Oxbow
ほぼ10年ぶりのアルバムとなる今作で、不協和音好きのアヴァンメタル・バンド、オックスボウはインタープレイをタイトに、ディストーションをルーズにして戻ってきた。シャダー・トゥ・シンクとも、チャベスとも、初期のロリンズ・バンドとも違うタイプの、半分壊れたインディーの逆襲のような音だ。ゆらゆら揺れるグルーヴと奇妙な角度を持ったストリングスがミックスされ、その間から聞こえる緩やかな大砲は言わずと知れたユジーン・ロビンソンのヴォーカル。音の嵐の中で叫び、悲痛な声を出し、裏声で歌い、囁き、高笑いする。

Translated by Miki Nakayama / Edit by Toshiya Oguma

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