LUNA SEA、INORANが考える「脇役の美学」とは

LUNA SEAにはSUGIZOというX JAPANのメンバーに抜擢されたほどの強烈なギタリストがいる。この2人のコンビネーションこそがLUNA SEAの武器なのだが、いい意味でも悪い意味でも2人は比較されてきた。若き日のINORANは音楽雑誌のインタビューで、ギタリストとしてSUGIZOからの影響を公言してきたし、ある種のコンプレックスも吐露してきた。「実は今でもSUGIZOに対するコンプレックスはあります。僕なんかがギター専門誌に出るのは恐縮しちゃうぐらいで。でも、PCを速く打てるからと言ってそれでPCを全部使いこなせているわけじゃなくて。PCを打つのがゆっくりでも、PCをちゃんと使いこなせてる人もいる。僕はそんな感じかも。それと、役者でも主役を張らない脇役っていますよね。そういう脇役の美学が好きなのかもしれない。でも、脇役だからと言ってサブじゃないんでね」と、不躾な質問にも笑顔で答えてくれる。

脇役の美学……ならばINORANのサイドギターの美学とはどんなものなんだろうか? 「支える気持ち、かな。自分が今この場にいられるのはそういうのがあるから。それはバンドの話だけじゃなくて。この世の中、生きて行くにはいろんな人に支えてもらっているという気持ちを持つことが大事。だけど、自分も支えている。そういう姿勢は大事にしてますね」と教えてくれた

そしてINORANの木を見て森も見るギタープレイはLUNA SEAのライブでもいかんなく発揮されている。以前、ドラムの真矢に取材した際に、こんな話をしてくれた。ライブで演奏が激しくなり、ボルテージが上がると、どこのパートを演奏しているのか分からなくなることがあるという。そんなとき真矢はイヤモニのINORANのパートのボリュームを上げるそうだ。そうすると正確無比なINORANギターが今の演奏地点を教えてくれる。まるで、道なき森の中を歩くための地図のように。INORAN本人にこの話を告げた。「確かに、情熱と冷静の両方を意識して演奏をしていると思いますね。そんなふうに演奏できているとしたら、それはメンバーのおかげでもあるけど」とここでもINORANの眼差しはメンバーみんなを見ている。

ただ、こんな話を付け加えてくれた。「昔は冷静なだけだったんです。でも、LUNA SEAが2000年に終幕(活動停止)して、そのあと2010年にREBOOT(活動再開)として海外を回ったとき、それまで行ったこともない場所なのに、僕らの音楽を聴いてくれていた人が大勢いたのと、自分のソロ活動も2011年にリリースしたアルバム『Teardrop』からロックにシフトしていくなかで、ロックはずっといつも自分の近くにあったことに気づいて。ロックの持つ熱というか、もっと自分も出していこうと思えたんです。僕はEDMのDJでもないし、アスリートでもない。ロックを奏でているんだからって」

その冷静さと情熱の切り替えのスイッチに一役かっているのがタバコのようだ。実際、アルバムのレコーディングでも気持ちや頭の切り替えにタバコは必需品だったという。そして最後にこんなエピソードを教えてくれた。「スタジオの喫煙所が屋外にあるんですよ。タバコを吸うときに外の空気とか天気とか気温が分かるんです。今、冬が近づいてるんだとか、今日は天気がいいなぁとかさ。一服しながら上を見る……。それに喫煙スペースって気を張らず人間とコミュニケーションができる場所だったり時間だったりするよね。そういうことの大事さが分かるようになったなぁ。そんなことを考えながらいつも上向いてタバコを吸ってたよ」と。

木を見て森も見て空も見る。少し出来過ぎな感じだが、そんなことがさらりとできてしまうほどINORANの音楽人生は今充実している。


『LUV』

LUNA SEA
ユニバーサルミュージック
発売中


INORAN
1970年生まれ。1989年に現メンバーでLUNASEA を結成。1997年よりソロ活動も開始。他にもMuddyApes、Tourbillon などで活動する。LUNA SEAの最新アルバム『LUV』を引っさげ、2018年1月27日より全国ホールツアー「 LUNA SEA LUVTOUR 2018」が始まり、全国9カ所18公演を行う。
http://inoran.org/

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