ファレル、気候変動へ警鐘:100年後にリリースする新曲の全貌とは

ファレル・ウィリアムス作曲による特別な一曲が録音されたレコード。この盤はコニャック地方の土を原料とする粘土で作られている。

フランスの最高級コニャックブランド「ルイ13 世」が、ファレル・ウィリアムスとともにオリジナル曲「100 Years: The Song We’ll Only Hear If We Care」を制作。100 年後の2117年にリリースされると発表され、話題を集めている。このユニークな曲は、2017年11月13日(月)、上海にて行われたシークレットイベントで一度限り披露された。その後、金庫によって2117年になるまで封印される。今回はお披露目イベントの様子のレポートとともに一連の企画の真意を探る。

一生に一度しか体験できない特別な空間


2017年11月13日、上海某所にて「100 Years:The Song We’ll Only Hear If We Care(私たちが変われば聴ける歌)」のプレミア発表会が開催された。世界中から集まった100名のゲストにはイベント直前まで会場の詳細は明かされず、スタート時間に合わせて迎車(テスラ)に乗って会場へ。その移動中、雨の上海にそびえ立つ高層ビルにライトアップされていたのは、なんとユリの紋章を模した「ルイ13世」のマーク。早速のサプライズに出迎えられたゲストたちは、興奮の面持ちで会場に到着した。

場内ではウェルカムドリンクがふるまわれるなか、さまざまな国のセレブリティが続々と登場。手持ちのスマートフォンや電子機器は鍵付きのケースに収納され(場内の録音は一切禁止)、100人のゲストたちとファレルは別室に移動した。ステージ上には「ルイ13世」のグローバル エグゼクティブ ディレクターのルドヴィック・ドゥ・プレシとファレルが立ち、今回のプロジェクトの経緯をあらためて説明。


上海にて行われたシークレットイベントの会場。世界中から100名のゲストが集まった。


録音(携帯電話等の持ち込み)は一切禁止。場内では鍵付きのケースで管理された。

今後100年間、この曲は一度も演奏されることも聴かれることもない。ファレルの特別な一曲は、コニャック地方の石灰質の土を原料とする粘土で特別に製作したレコードに録音されたものである。そのレコードを保管する金庫はコニャック地方の「ルイ13世」セラー内で100年の時を過ごす。この金庫は、100年後まで決して解錠しない最高峰のセキュリティを備えているが、唯一、水に沈んだときにその機能は破壊され、粘土のレコードは水に溶けて、曲そのものも失われてしまう。つまり地球温暖化がこのまま進むと、コニャック地方のセラーは水没し、ファレルの曲を聴く機会は永遠に失われてしまうというわけだ。このプロジェクトで「ルイ13世」とファレルが目指すのは、国境を越えた地球温暖化対策について100人のゲストが呼びかけ、世界中の一人一人がアクションを起こすことなのである。

この曲が録音されたレコードが、ターンテーブルの上に置かれ、ファレルの手によって針が落とされた。会場にいるゲストは一生に一度しかない体験を味わうとともに、その音楽が伝える壮大な世界観に酔いしれた。その後レコードは金庫に収納され、100年後まで開かずの扉の中に眠ることとなった。


ステージ上で世界に一枚しかないレコードに針を落とすファレル。


ファレルの呼びかけは「#IfWeCare」のハッシュタグで全世界に広がった。

今回の企画は、2015年に100年後公開の映画を制作したジョン・マルコヴィッチからのバトンタッチによるもの。
「ルイ13世」が、このようなプロジェクトに取り組むのは、このコニャックが芸術作品だと捉えているから。言葉で説明がつくものではなく、体験しなければならないもの。まさしく体験しなければ説明ができない、特別な一夜だった。

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