セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズが語る:「俺たちは破滅する運命だった」

ーあなたはタフな幼少時代を過ごしました。本書を執筆する上で困難だった点は?

継父についての部分だな。俺は10歳の頃に継父から性的暴行を受けたせいで、15歳くらいまで自分のセクシュアリティに確信が持てなかった。俺は完全にストレートだったけど、あの出来事のせいで俺は迷走する羽目になった。多感な時期にあんなことを経験したら、誰だって混乱するさ。

ーその出来事はあなたの人生にどう影響したのでしょうか?

窃盗癖がついて、セックス依存に陥り、あらゆるドラッグに手を出した。でも俺がヤク中でアル中になったのは、あの出来事のせいだけじゃない。遺伝による部分も大きかっただろうからな。でもあれをきっかけにその傾向が加速したのは確かだ。俺は自分の中にぽっかりと空いた穴を埋めようと必死だった。

長い間、俺はあの出来事を誰にも話さなかった。自分の中でも整理がついていなかったんだ。あんなことを経験したら、普通の子供なら怒りを覚えるか、フラストレーションを抱えるかのどちらかだ。俺は15〜20年前くらいにセラピーを受けるまで、あの出来事をずっと引きずっていた。

ー窃盗癖とセックス依存がその出来事に起因することに気づいたのはいつでしたか?

セラピーの時だ。窃盗を繰り返していた頃、俺はそれが悪いことだとは思っていなかった。罪を犯していることは自覚していたけど、それが必要だと感じていたんだ。当時はその理由が自分でも分かっていなかった。窃盗は俺の日常の一部だった。屈折していたけど、それが俺の生きがいになってたんだ。

今となっては後悔してるよ。俺のせいで涙を流した人もいただろうし、申し訳なく思ってる。できることなら償いたいよ。でも当時の俺は、他人のことを思いやる余裕なんて一切なかったんだ。

ー母親に継父のことを話したことはありましたか?

母親には手紙を送った。当時のセラピストに勧められて、俺は自分が経験したことと思っていることを手紙にしたためた。母親から送られてきた返事は、俺を真っ向から否定する内容だった。「そんなことが事実のはずがない。あんたはイカれてるのよ」臭いものには蓋をしろってわけさ。


90年代初頭のジョーンズ(Photo by Davis Factor)

ー母親と最後に話したのはいつですか?

2008年だ。アルコール依存を克服した時、俺は母親との関係を修復しようとした。セックス・ピストルズが始まった頃、俺たちは既に何年間も連絡を取っていなかった。もともとそれくらい疎遠だったってことさ。正直に話すと、別に彼女との関係の修復を望んでいるわけじゃないんだ。ただ、血のつながりは無視できないんだよ。彼女を悪い人間だとは思っていない。ただ冷たいだけさ。本当は子供なんか欲しくなくて、俺を授かったのは事故だったんだと思う。でも彼女は彼女なりにベストを尽くしたはずだし、俺は彼女に悪意を持ってはいないよ。お互いにとって、俺たちは疎遠でいる方がいいんだよ。

Translation by Masaaki Yoshida

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