「EDMは終わった」デッドマウスが新作に対する複雑な思いを語る

ーマウスのヘルメットをかぶった状態でも周囲は見えているのですか?

いいや、見えてない。音しか聞こえない状況って恐怖感を煽るんだよ。以前にファンを殺しかけたことがあってさ。ライブで使ってるキューブのセットのプラットフォームは6フィートもあって、中に入るには背後の梯子を使うんだ。ライブ中にツアーマネージャーがセットに入ってくる場合は、俺が気づくよう事前にセットの床を叩くようにさせてるんだ。その日はイヤホンモニターがぶっ壊れてたんだけど、マネージャーの声からして何か緊急事態が起きたんだと思った。彼はファンがステージに上がって、セットの後ろに回りこんだって伝えようとしてたんだ。彼はただセットに上がってみたかっただけなんだけど、ヘルメットを被った俺には相手が見えやしない。(胸元を指して)ここに付けてたカメラで周囲をチェックするしかない状況下で、過去にトラウマを経験してる俺はパニックになった。

誰かが階段を駆け上がってくるのが聞こえて、俺はとっさに後ろ蹴りを食らわせた。そいつは真っ逆さまに転げ落ちて、背中からドスンと着地した。嫌な予感がしてヘルメットを外して振り向くと、そいつはピクリともせずに横たわってた。そいつが首の骨を折って死んだと思った俺は、目の前が真っ暗になった。たとえ一命をとりとめたとしても、俺のキャリアは完全に終わったと思った。でもそいつは飛び起きて、一目散にステージ脇に走っていったんだ。あんなに気が動転したことは後にも先にも一度もないよ。そんな思いをさせたクソ野郎に、もう一発蹴りを食らわせてやりたかったくらいさ。

ーあのヘルメットが不安を煽ってしまっているんですね。

イエスでありノー、ってところだな。周囲が見えないおかげで、周囲に潜む危険から目をそらすこともできるからな。それはあのヘルメットのメリットさ。

ー同じくヘルメットをかぶるマシュメロのようなアーティストについてはどう思っていますか?

ちょっと待てよ、今「マシュメロのようなアーティスト」って言わなかったか?マシュメロのような凡人の間違いだろ?そこははっきりさせとかないとな。ヘルメットをかぶることが俺のパクリだなんて言わねぇよ。それなら俺だってダフト・パンクのパクリになっちまうからな。俺がムカついたのは(ツイッターで)あいつが「お前は俺をパクったから、俺もお前をパクった」とか言ってきやがったからだよ。読者が喜ぶからって、そういうのを拡散しないでくれよな。ただでさえソーシャルメディア上じゃ、俺は一日中あいつの写真を燃やし続けてるなんて言われてるんだからさ。

ーあなたは2014年に、EDMは終わると断言しました。

実際去年終わっただろ?知らなかったのか?少なくともEDMの8割以上はもう完全に終わってるよ。イノベイターたちが築き上げたルーツが完全に失われてしまったからな。メインストリームで成功を収めた俺は加害者の1人だよ。EDMはもう完全に飽和しちまってるのさ。

ーEDMはこの先勢いを取り戻すか、それとも衰退していくと思いますか?

このまま消えてくさ。一度廃れた何かが復活するなんてことはないんだよ。ディスコはシカゴのウェアハウスシーンを生み、そこからテクノが生まれ、結果的にEDMが誕生した。隆盛を誇った音楽が生まれては消えていくのを、俺は嫌というほど目にしてきたんだ。弧を描いて振り出しに戻るっていうのは、音楽の世界じゃ成立しないんだよ。



Translation by Masaaki Yoshida

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