「EDMは終わった」デッドマウスが新作に対する複雑な思いを語る

マシュメロとのビーフ、アモン・トビンに対する尊敬について語ったEDMの申し子(Matt Barnes)

デッドマウスが語る、新作に対する思いの変化、ステージで感じる身の危険、そして来るべくして訪れたEDMの終焉とは。

トロントからそう遠くない田舎町へと引っ越したばかりのデッドマウスは、自宅スタジオでのスカイプ取材の開始直前まで、ファンレターにひとつずつ目を通していた。引っ越し期間中に郵便局が配達し損ねた6ヶ月分のファンレターは、彼の目前に山のように積もっていた。「もうみんな俺のことなんて気にかけてないと思ってたんだけどな」タバコを取り出しながら笑って話す彼のところに、ガールフレンドがコーヒーと揚げたてのチキンナゲットを運んできた。トレードマークの巨大なネズミのヘルメットではなく、フランネルシャツを身につけた35歳のジョエル・ジマーマンは、新居での生活にすっかり馴染んでいる様子だ。

グラミー賞に6度ノミネートされた経験を持つ彼は先週、2007年に立ち上げた自身のレーベルMau5trapより、6枚目のアルバム『W:/2016ALBUM/』を発表した。『ゴースツ・ン・スタッフ』『ストロボ』『アイ・リメンバー』等のビッグなダンス・アンセムで知られる彼だが、今作はプログレッシブ・ハウスから、ムーディなチルアウトやミニマルテクノまで、バラエティに富んだ内容となっている。

「コンピレーションのようなアルバム』と自身が話すように、彼は今作で様々なエレクトロニック・ミュージックのスタイルに挑戦している。しかし、彼はその出来にフラストレーションを感じていた。新作を「気に入っていない」と先月ツイートした彼は、その理由について「急かされた」上に「既存の曲を適当に詰め合わせただけ」だからだと明かした。ローリングストーン誌の取材に応じた彼は、アルバムに対する思いの変化、田舎での生活、恐怖感、トレードマークのヘルメット、そしてEDMの衰退について、率直に語ってくれた。

ーあなたはツイッターで新作を気に入っていないと明かしました。その真意は?

そのことは話すなって言われてるんだ。上からの命令さ。

ーでは今はどうお考えですか?

改めて聴き直してみて、だんだん好きになってきたところさ。『スノーコーン』『ウェルク・ゼン』『ノー・プロブレム』なんかはすごくいい出来だと思うし、気に入ってるよ。でもアルバムとして一貫性に欠けるところが気になってるんだ。1年間のうちに書いた曲をただ詰め合わせただけだからな。『ザ・ウォール』みたいな作品とは対極にある。俺はとんでもないモノを作りたかったんだけど、そうならなかったことは残念に思ってるよ。

ー作品に対して評価を決めかねることはよくあるのでしょうか?

自分の作品に限らず、俺はいろんな物事に対してしょっちゅう態度を変えるんだ。たとえば狩猟によるアラスカのカリブーの減少問題とかね。大丈夫だろって呑気に構えてた次の日には「カリブーを絶滅の危機から救え!」なんて主張してたりするんだよ。俺は自分の作品に対して厳しすぎるのかもしれない。でも作る曲すべてに納得してるようじゃプロとは言えないからな。他に方法はないんだよ。


「作る曲すべてに納得してるようじゃプロとは言えない」ーデッドマウス Danny Mahoney

ー『ウェルク・ゼン』がお気に入りとのことですが、具体的にどういった点が気に入っているのでしょう?

曲そのものさ!ただキックの鳴りには納得がいってないんだよ。ヘッドフォンで聴けば何が問題かわかると思う。40〜60ヘルツのキックをちゃんと鳴らすには、立派なサウンドシステムが必要なんだ。小さなサブウーハーでも持ってれば一応聞こえるだろうけど、パソコンのスピーカーとかじゃまったくダメなんだよ。それはそれでかっこいいとは思うけどさ。

俺は初期のアモン・トビンのグリッチーなサウンドが大好きなんだ。初期の彼の作品から受けた影響を、自分の作品にも反映させたいと思ってる。パクろうってわけじゃないけどな。自分の曲には心酔できないもんなんだよ。毎晩『アイ・リメンバー』を聴くなんてまっぴらだけど、アモン・トビンの『ソード』ならいつでも歓迎さ。

Translation by Masaaki Yoshida

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