ブルーノ・マーズ「完璧主義者の新たなる挑戦」

『アップタウン・ファンク』で自らが打ち立てた記録に挑む最新作『24K MAGIC / 24K・マジック』、その誕生の裏に隠された物語


マーズは曲を大胆に作り変えることを恐れない。4週間チャートの首位にとどまった『グレネイド』は、当初は60年代にアメリカを席巻したイギリス生まれのジャングル・ポップ調だったが、『あれはクソだった』と話すマーズは、発売直前になって曲を大幅に作り直している(オリジナルバージョンを聴かせてもらったが、彼の判断は正しかったと言える。「しかもこれがセカンド・シングルになる予定だったんだぜ!」信じられないといった様子でマーズはそう話す。「マジで作り直してよかったよ」)。同じく大ヒットを記録した『ロックド・アウト・オブ・ヘヴン』は、もともとはサンタナのチャチャ風デュエット『スムース』を思わせるトラックだったという。マーズがそのバージョンを現在もノートPC内に保存しているのは、プロセスを重ねることで曲が見違えるように生まれ変わることを忘れないためだ。『アップタウン・ファンク』も同様に、完成に至るまで数回にわたって作り直されたという。「これはさすがにゴミ箱行きだった」そう話すマーズは、不可思議なハードロック風のブレイクと「このマザーファッカーを燃やしちまえ!」とシャウトするコーラスが耳に残る、お世辞にも優れているとは言い難い同曲の初期デモを聴かせてくれた。「あの曲のコーラスには何ヶ月も費やした」マーズはそう話す。「でもある日気づいたんだよ。『この曲にコーラスはいらない』ってね」

たった1行のフレーズが、曲をヒットさせることもあれば台無しにすることもある。昨年発表されたアデルの『25』に収録された『オール・アイ・アスク』で、マーズは彼女とコラボレーションを果たしている。会ってすぐ意気投合したという2人は、わずか2度のセッションで同曲をほぼ完成させた。しかしセカンドヴァースに登場する「この手を離さないで 恋人同士でいられる間だけは 」というフレーズでは、両者の意見が対立したという。

「あの曲はディーヴァのためのビッグなバラードだ」マーズはそう話す。「なのに『恋人たち』っていうフレーズはどうなの?実際にそんな言葉を口にするやつなんていないよ。『私たち恋人同士なの』とか『彼は私の恋人』なんて誰も言わないだろ?」

「でも彼女は頑なだった」彼はそう話す。「『絶対ダメ。ここはこれでいいのよ』そう言って聞かなかった。でも彼女が正しかったんだ。この曲をビッグにしているのは、誰も口にしないその言葉なんだよ。耳馴染みのない言葉だからこそ、人々の記憶に強く残るんだ。『ボーイフレンド』や『ガールフレンド』じゃなくて、『恋人たち』だったからこそ響いたんだ。時々ピアノを弾きながらあの曲を歌うんだけど、今じゃあの部分が一番のお気に入りさ。マジでパーフェクトだよ。カッコつけるんじゃなくて素直になること、それを俺はあの経験から学んだんだ」

結果的に、マーズは不本意ながらもユニコーンの歌詞をお蔵入りさせた。「最高傑作の1つなんだけどな」悔しさをにじませながら彼はそう話す。「でもいつか必ず日の目を見ることになるよ。4枚目のアルバムで使われるかもね」

「エナメル革の靴、小指の指輪、ムースで固めた髪、そういうショービズの世界こそが俺にとっての学校だった」

6週間後、マーズは自宅から近いイタリアンレストランでランチをとっていた。アルバムはミキシングの段階へと入っており、肩の荷を降ろした様子の彼はリラックスしていた。イタリアのコモ湖付近で行われたスポティファイ創設者、ダニエル・エクの結婚式でのパフォーマンスを終えて帰ってきたばかりだったこともあったかもしれない。「ってか、何で知ってんの?」満面の笑みを浮かべながらマーズはそう話す(そのニュースは参加者がインスタグラムに投稿したことで広まった)式でのパフォーマンスの見返りにスポティファイのホームページで大々的に取り上げられるのかと尋ねると、彼はこう答えた。「アルバムはがっちりサポートしてもらう予定さ」少し決まり悪そうにそう話した彼は、こう付け加えた。「あとちょっとした小切手を受け取ったよ」

滞在を楽しんだかという質問に、彼は笑顔でこう答えた。「コモ湖のすぐ近くでさ、すごくいいところだったよ」

Translation by Masaaki Yoshida

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