ブルーノ・マーズ「完璧主義者の新たなる挑戦」

『アップタウン・ファンク』で自らが打ち立てた記録に挑む最新作『24K MAGIC / 24K・マジック』、その誕生の裏に隠された物語


ノートPCでチェックした最新バージョンには、既に20回以上修正が加えられているはずだという。過去のバージョンでは、シルクのようなスムースなビートに合わせて彼が金のネックレスとコニャックについて歌う部分を「陳腐すぎる」と一蹴し、別の部分では「70年代の西部劇みたいだ。ローラースケートでも履けってか?」と毒づいた。今回のバージョンにはおおむね満足しつつも、ブリッジのハーモニー、あるいはコード進行がまだ少し気になるという。「理由はわからないけど、何かが違うってことだけは直感的にわかってるんだ」苛立ちを隠せない様子で、マーズはコルグのキーボードの鍵盤を無造作に叩く。「妥協は絶対に許されないんだ」

曲の仕上がりに対する彼の偏執的なまでのこだわりは、ショービジネスの世界に足を踏み入れた時から少しも変わらないという。スターになるという夢を叶えるため、彼は18歳の頃に故郷のハワイからロサンゼルスへと移り住んだ。「俺の完璧主義はその頃から始まったんだ」彼はそう話す。ブランディー、シュガベイブス、そして再結成したばかりだったメヌード等のトラック提供やプロデュースを担当することで、彼はヒット曲に対する嗅覚を身につけていった。

『24K・マジック』にも参加しているグラミー受賞歴を持つプロデューサー、ジェームス・フォーントルロイは当時からマーズと親交がある。「彼と会った日、俺はある曲に取り掛かってた。そこにアフロヘアのチビがやって来てこう言ったんだ。『イイ感じじゃん、俺に歌わせてくれよ!』」フォーントルロイは2人の出会いをそう振り返る。「最初は一体どこの馬の骨かと思ったよ。でもその日、こいつは絶対にスターになるって確信したんだ」

「アーティストのほとんどは単なるエンターテイナーに過ぎない」彼はそう話す。「でもブルーノは真のミュージシャンだ。ベースやハイハットのサウンドにまで徹底的にこだわり、あらゆる楽器を弾きこなす。プリンスがそうだったようにね」

しかしそのスキルを持ってしても、優れた曲を生み出すことは容易ではないという。「そりゃあもう死ぬほど大変さ」マーズはそう話す。「どんなビートも、どんなライムも、どんなコード進行も、既に誰かが作ってしまってるからね。ライバルが星の数ほど存在する中で、ヒット曲を生み出すのは宝くじをあてるようなもんなんだよ。運を味方につけるしかないんだ」

気が遠くなるような彼の曲作りのプロセスは、妖艶なスロー・ジャム『ヴェルサーチ・オン・ザ・フロア』にも表れている。「異なるヴァージョンが6つあるんだ」そう話しながら、彼は『プールサイド・ヴァージョン』と名付けられたオリジナルデモをプレイしてくれた(確かにピニャ・コラーダにぴったりだ)。マーズはこう歌う。「ユニコーンに乗ってこの嵐を突き抜けよう / 山頂でメイクラヴして 泉で汗を流すんだ」自身の歌を聴き返しながら、マーズは笑ってこう話す。「われながら最高だね」

「思わず笑顔になるような歌詞だろう?」マーズはそう話す。「この曲を聴いた人たちはみんな笑ってた。それって最高だよ。でもビートがユルすぎるんだ。俺はプールサイドでチルするための音楽には興味ないからね。嵐の中を駆け抜けるユニコーンを思わせる曲にしたいんだ」

そのイメージを形にするため、幾つもの異なるヴァージョンが生まれた。マーズが次に聴かせてくれたのはリリックはそのままに、ビートがより壮大なミュージカル調にアレンジされたものだった。「確かにファンタジー感はあるよね」マーズはそう話す。「これはこれで悪くないんだ。でもこれがアルバムにフィットするかどうかっていうと、正直疑問だよね」納得がいかない様子のマーズはこう続ける。「シルクのようなスムースなサウンドで、世界を虜にしたい。でもなぜかグっと来ないんだよ。この曲はアルバムのカギを握るビッグなバラードであるべきなんだ。それで気づいたんだよ、よりドラマチックな曲にするには俺の歌そのものを見直す必要があるって」

彼らは曲のメロディを一から練り直すことにした。それに伴い、歌詞の変更も余儀なくされた。そうして誕生したボーイズ・Ⅱ・メンを思わせる最新バージョンは、ドラマチックなクライマックスでマーズがこう歌い上げる。「裸になるまでキスしていよう / 床に脱ぎ捨てらてたヴェルサーチ』マーズはこう話す。「セックスしようって歌うのは、そろそろ終わりにしようと思ったんだよ」

Translation by Masaaki Yoshida

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