ブルーノ・マーズ「完璧主義者の新たなる挑戦」

『アップタウン・ファンク』で自らが打ち立てた記録に挑む最新作『24K MAGIC / 24K・マジック』、その誕生の裏に隠された物語

第60回グラミー賞で主要含む6部門を制覇したブルーノ・マーズ。ここでは2016年に発売されたローリングストーン誌のカバーストーリーを掲載。生い立ちから、母親の死、ハーフタイムショウ、新作の制作秘話まで語るロングインタヴュー。

「このスタジオにもう18カ月間も缶詰状態なんだよ!」

取材が行われた7月下旬、ブルーノ・マーズはカリフォルニア州バーバンクにあるレコーディングスタジオ、グレンウッド・プレイスにいた。白いTシャツ、カールがかった髪を覆うヴェルサーチのキャップ、素足をのぞかせる白いスリッポンのスニーカーという姿の彼は、中庭で数十本目だと思われるタバコをふかしている。身長約165センチの小柄なスーパースターは、3枚目のアルバムを完成させるべく奮闘を続けていた。

「もうあと一歩のところまで来てるんだ」現在31歳のマーズはそう話す。「もう1曲完成させて、あと別の曲のブリッジを少しいじったらほぼ完成さ。来月半ばまでには全部終わらせたいと思ってる。ここのスタジオは高いからね、いつまでもダラダラと続けてられないんだ」


RS誌の表紙を飾ったブルーノ・マーズ(2016年9月25日 ロサンゼルスで撮影)Mark Seliger for Rolling Stone. 衣装スタイリング: Ingrid Allen and Tristan Saether, ヘアスタイリング: Adrienne Sanchez.

彼が現在着手しているのは、何ヶ月も悪戦苦闘し続けているトラックにスパイスを加えるべく招集されたスクリレックスとのコラボレーション曲だ。「彼は天才さ、まさにエディットの魔術師だよ」マーズはそう話す。「でもまだ納得がいかないんだ。グルーヴにピンとこないっていうか、コーラスが問題なのかもしれない。グッと来ない部分に何が欠けているのか、それを突き止めようとしてるんだ」

前作が発表された2012年12月から約4年、ポップスターとしては異例の長さといえるブランクを経験したが、その間も彼はシーンを賑わせ続けた。2度にわたってスーパーボウルのハーフタイムショーに出演し(2014年にはヘッドライナーとして登場、今年2月にはコールドプレイとビヨンセと共に出演)、マーク・ロンソンとのコラボレーション曲『アップタウン・ファンク』は過去数年で最大のヒット曲となった。しかし自身のアルバム制作から長く遠のいていた彼は、感覚を取り戻すことに苦労したという。とめどなく修正が加え続けられる中、灰皿にはタバコの吸い殻が山のように積み上がっていった。「もうみんな気が狂っちまいそうになってるよ」彼はそう話す。「エンジニアは特にヤバいよ。俺をぶっ殺したいと思ってるはずさ。この薄暗い空間で来る日も来る日も作業し続けて、マジで頭がおかしくなりそうになってるんだよ」

Translation by Masaaki Yoshida

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