アル・ゴアが語るボブ・ディラン:彼が私の政治観を作った

"ディランは私のアイドルだ。

学生時代のある日ヘッドフォンをつけてディランを聴き始めたら、一気にのめり込み、『戦争の親玉(原題:Masters of War)』の歌詞を暗記するまでになった。ディランは私のアイドルだ。

2000年の大統領選を終えて人生の立て直しを図っていた頃、私はニューポート・フォーク・フェスティバルで彼のプレイを観た。ディランが1965年にエレクトリックへ転向して以来の出演だった。到着が遅れていた私を待ってくれていたのかどうかはわからないが、会場へ着くと彼のマネジャーが私をステージの袖へ連れて行ってくれ、間もなくディランのステージが始まった。間近で観られるのはとても光栄なことで、ゾクゾクした。彼のバンドも最高だった。彼と一緒にやりたくないミュージシャンなんていないだろう? 

同じ頃、マディソン・スクエア・ガーデンのコンサートへも出向いた。ステージ上では口数が少ないことで有名なディランが、その晩は「私の友人、アル・ゴアが来てくれています」とひとこと紹介し、また演奏へ戻った。それはもう私の人生で最高の瞬間だったね! ナッシュビルの私の自宅には、その夜に彼から贈られたブルースハープを飾った特別な場所がある。おそらく色々な人にあげているのだろうが、それでも私にとっては特別だ。

2015年、ディランがMusiCare賞を受賞した際の素晴らしいスピーチも私はその場で聞いていた。彼がステージへ上がった時、私はとても驚いた。何と彼は何ページもの原稿を事前に用意していたのだ。最高のスピーチだった。音楽の歴史や伝統とボブとの関わりを紐解くロゼッタストーンといえる。

ディランの音楽は、以前よりもより一層現実の問題と密接に関係している。現代のミュージシャンたちはそれを深く掘り下げている。先月(2016年11月)の大統領選が、警鐘を鳴らして人々を動かし、アメリカを含む人類全体が今やるべきことを具体化するような意義のあるパワフルな曲を生み出すきっかけになってくれないと、私は憤慨するだろう。

私が尊敬する人たちの中には、ディランのノーベル賞受賞に対して異を唱えている人もいる。しかし私にとって、その答えはいたってシンプルである。ディランの書いた作品は、この地球上の誰かが書いたどの作品にも負けないインパクトがあったということだ。以上。

(聞き手:Patrick Doyle)

Translation by Smokva Tokyo

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