エルトン・ジョン"エイズへの偏見"について語る:「人々の無知こそ最も大きな障害」

エイズへの偏見について語るエルトン・ジョン。(Photo by Andrew Toth/Getty Images for Bulgari)

世界エイズデーエルトン・ジョンは、トランプ当選を受け「もし世界各国の政府が支援を止めるのならば、この病気に打ち勝つことはできない。人々の無知こそ最も大きな障害」だと述べ、エイズ検査の必要性と偏見の一掃を訴えた。

エルトン・ジョンとそのパートナー、デヴィッド・ファーニッシュは世界エイズデーの12月1日、HIV検査の普及への尽力、そしてHIVへの偏見や同性愛嫌悪がこの病気との闘いにどのような影響を与えているかについて語った。

ジョンは、北アイルランドの政治家サミー・ウィルソンが英国政府はエイズ研究に予算を使いすぎていると発言したことや、同じく政治家のトレバー・クラークが異性愛者もエイズに罹り得ることを知らなかったことに対して「正直に言って、このようなことが私たちにとっての最も大きな障害なのです。彼らにはあきれます」とBBCに語った。

また「我々はただ皆さんに検査を受けてほしいだけです。私たちはロンドンのキングス・カレッジ病院で、病院にいってただ血液検査をし、同時にHIVの検査もできるプログラムを受けられるようにしました。実際、血液検査をする多くの人たちが、HIV検査も受けています。もし、そうでもしなければ彼らがHIV検査を受けることはないでしょう」ともコメントした。

ジョンは、「毎年何百万ポンドもの支出を節約する」ものだとして、英国政府にこのエルトン・ジョン財団が提供するこの新しいプログラムをサポートするように勧めている。「もし多くの人が検査を受ければ、それが診断となり、治療を受けることができます。それによって病気も広がらなくなります。そして私たちは自分たちの置かれた状況をはっきりと知ることができるようになるのです」とジョンは語っている。

ジョンとファーニッシュはさらに社会の同性愛嫌悪が病気が拡大する土壌をつくっているとし、次のように指摘した。「感染者を社会から見えない存在にしてしまうことこそ、最もやってはいけないことです。それが同性愛者でも、静脈注射による薬物の乱用者でも、囚人でも、トランスジェンダーでも、そのような人々を治らない病気だからといって見捨てるのは間違っています。誰もが救いの手を差し伸べてもらうことができるべきです」。

またジョンは後日、ドナルド・トランプが大統領になることによるエイズの研究と治療への影響について「これまでの成果がどれほど後戻りしてしまうのかはわからない」と懸念を表明した。実際にトランプが国政を行う前に批判をすることは避けたものの「私たちは恐ろしい時代に生きている」というコメントを残している。

「私たちはここまで進歩を遂げた。ゴールは近づいている。しかしもし世界各国の政府がアクセルから足を離し支援を止めるのならば、この病気に打ち勝つことはできない」とジョンは警告する。「もう一度エイズは拡大し、壊滅的な被害を生む。20年前と同じようにな壊滅的な状況になるということだ。だから私たちにはエイズに対する義務に忠実な政府が必要なんだ」。

前出のアイルランドの政治家のコメントに対して、英国首相テリーザ・メイは声明を発表し、HIVへの偏見について「我々の社会において嫌悪すべき汚点である」とし、「治療と予防の急速な技術的進歩に反して、人間の見方はそれほど進歩していない」と述べた。「最新の英国でのHIVへの偏見に関する調査は、英国のHIV感染者のほぼ5人に1人が過去12ヶ月のあいだに自殺を考えたことがあることを示しました。そして約半数が自分がHIV感染者であることに対して恥や罪悪感を感じ、自尊心の欠如に苦しんでいます。HIVへの偏見は我々の社会において嫌悪すべき汚点であり、一掃しなければならないものです。偏見は単に道徳的に悪であるだけではありません。実際にその偏見が、必要な検査や治療、支援から感染者を遠ざけているのです」。

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