ガンズ・アンド・ローゼズ『ユーズ・ユア・イリュージョン I &Ⅱ』:ロック史における金字塔の制作秘話

ガンズ・アンド・ローゼズがレコーディングを行っていたスタジオの裏で、警察がごみ収集コンテナの中から切断された腕と首を発見した事件は、バンドが後に経験する闇を示唆していた。エネジーに満ちた『ダブル・トーキン・ジャイブ』で、ストラドリンは事件に言及している。「当時イジーはインディアナに帰省していた。警察がスタジオのそばで人体の一部を発見したニュースを耳にした彼はすぐさまこっちに戻ってきて、あの曲のオープニングのフレーズを録って曲を完成させた」ソーラムはそう話す。

アルバムの制作を進める一方でツアーに出ていたバンドは、以降も暴力にまつわるスキャンダルが絶えなかった。『ユーズ・ユア・イリュージョン』の制作中、ローズは妻のエリンから暴力を理由に離婚を申し立てられた。バンドのセントルイス公演ではファンともめたローズがステージを去ったことを理由に、観客が暴徒となる事態が発生したが、その後も似たケースがたびたび発生している。「控え室から出ると叫び声が聞こえて、担架で運ばれていく人や血まみれの警察官がうじゃうじゃいた。本当に気が狂っちまうんじゃないかと思った」スラッシュはそう語っている。

「俺たちがステージを去った後、オーディエンスは暴徒と化した」ソーラムは当時をそう振り返る。「客席から椅子やら金属片やらが投げつけられ、クルーは俺たちの機材を身を呈して守らないといけなかった。しまいには機動隊がやってきて、オーディエンスに催涙ガスを浴びせる事態になった。俺たちはステージに戻る用意ができてたけど、結局ステージ衣装のままバンに乗り込むしかなかった。シカゴに向かいながら、その夜に起きた出来事をひたすら反芻したあの時のことは一生忘れないよ。翌日のニュースで多くのファンが負傷したことを知って、俺は初めて事態の深刻さを理解したんだ」

シーンを一変させるニルヴァーナの『ネヴァーマインド』が発表される1週間前の1991年9月、『ユーズ・ユア・イリュージョン』は満を持して世に送り出された。アルバムは大ヒットを記録し、2枚の合計セールスは1400万枚に達した。「発表したい曲がごまんとある中で、全部を世に送り出す方法について考えないといけなかった」異例の2枚同時発売というケースとなった経緯について、スラッシュはそう語っている。「まだ2作目だった俺たちのアルバムに70ドル払うやつなんてそうそういなかったはずだからな」

その奇策は前例のない記録を打ち立てた。ガンズ・アンド・ローゼズは、同時発売の2枚のアルバムでビルボードの1位と2位を飾った史上初のアーティストとなった。「俺たちはあの作品に何もかもを注ぎ込んだ」ソーラムはアルバムについてそう語る。「音楽こそが俺たちのすべてだったんだよ」

ガンズ・アンド・ローゼズは、ギタリストにスラッシュ、ベーシストにダフ・マッケイガンを迎えたラインナップで
2017年1月に来日公演が決定している。

http://www.universal-music.co.jp/guns-n-roses/


Translation by Masaaki Yoshida

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