騒々しい笑いは、ダンスシーンや車のなかで大合唱するシュガーヒル・ギャングの『ラッパーズ・デライト』などでうまくメリハリが付けられる。野球の話はほとんど出てこない、ここでは誰が女をモノにして、どれくらい寝られるかが重要なのだ。タイトルでもあるヴァン・ヘイレンの『エブリバディ』が示す通り、映画は男たちのあそこのサイズにまつわるジョーク、イライラするならムラムラしてしまえといった空気に満ちていて、あなたをひっきりなしに笑わせてくれる。
(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.リンクレイターはこのノンストップ・パーティみたいな映画を通じて、どんなパーティもやがて終わり、誰もが成長せざるを得ないという人生のヒントを散りばめている。それこそがリンクレイター映画の本質だ。登場人物たちは、自分を見つめ直し発見する。やがてジェイクは、演劇オタクで自分のことをよくわかっているビバリー(ゾーイ・ドゥイッチ)と恋に落ちる。本編に流れるさまざまなジャンルの音楽、ディスコ、カウントリー、パンクなど、サウンドの変遷と共に個々のアイデンティティも確立されていく。リンクレイターの手にかかれば、ごく限られた時代設定の物語も、世界共通のテーマとなる。彼こそが、映画史に残り続けるヒューマン・コメディの名手だ。
映画『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』監督:リチャード・リンクレイター
出演:ブレイク・ジェナー、ゾーイ・ドゥイッチ、グレン・パウエル、ワイアット・ラッセル、オースティン・アメリオほか
11月5日(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー。