イギー・ポップとジム・ジャームッシュ監督が語る、ストゥージズのドキュメンタリー映画

「本当に才能のある監督に、俺たちのドキュメンタリーを撮って欲しいと思ってた」イギー・ポップが語る、インディー映画界の鬼才ジム・ジャームッシュとのコラボレーション。 (C) Danny Fields c/o Gilliam McCain

イギー・ポップとジム・ジャームッシュが自ら語る、イギー&ザ・ストゥージズのドキュメンタリー映画『Gimme Danger』 そして永遠のロックスターがツアー生活からの引退を希望する理由とは。

1974年にザ・ストゥージズが解散した時、メンバーの誰一人としてバンドが後世まで語り継がれることになるとは予想していなかった。1969年に発表されたデビューアルバムは最高106位にとどまり、以降その記録が破られることはなかった。解散間際に行われたライブでは、『ユア・プリティ・フェイス・イズ・ゴーイング・トゥ・ヘル』『オープン・アップ・アンド・ブリード』等を熱唱する上半身裸のイギー・ポップを見かねた荒くれ者のバイカーたちが、ステージに次々とボトルを投げつけたという。バンドの解散後、ギタリストのロン・アシュトンと弟のスコット・アシュロンが両親の住む実家へと舞い戻る一方で、イギーはより深い狂気の世界へと入り込んでいった。売れなかった3枚のアルバム、大量の写真、ロック界でも屈指のお粗末さを誇るブートレグ盤の数々、わずかなライブ映像、そして無数の逸話だけを残して、ザ・ストゥージズは人々の記憶から消えていくはずだった。

しかし解散から時が経つにつれて、徐々にバンドの再評価が進んでいった。2003年にバンドは満を持して再結成を果たし、膨大なギャラで世界中の大型フェスのヘッドライナーを務め、発売当時は見向きもされなかった楽曲の数々がオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだ。バンドが精力的に活動を続けていた2008年、イギーは鬼才ジム・ジャームッシュにストゥージズのドキュメンタリー制作を依頼した。しかしその時点では両者ともに、作品の完成までに7年の歳月を要すること、そしてその間にバンドのメンバー2人がこの世を去るとは考えもしなかった。10月28日にアメリカでいよいよ公開される『Gimme Danger』(日本公開は未定)は、バンドのアーカイブ映像や未発表写真の数々、そして乏しい素材を補うために制作された新たなアニメーション等で構成される、バンドの軌跡を描いた感動的なドキュメンタリー作品となっている。

ある土曜の午後、南米ツアーを直後に控えたイギーとジャームッシュは、ニューヨークにあるホテルのスイートで取材に応じてくれた。作品の制作過程、イギーの今後、そしてストゥージズ再始動の可能性について、本誌は2人から話を聞いた。

Translation by Masaaki Yoshida

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