デザート・トリップ:疑う者をも黙らせた本物のクラシック・ロックのメガフェス

クラシック・ロックの祭典デザート・トリップでは、伝説的な6組のアーティストたちがパワフルなステージを展開した。(Andy Keilen for Rolling Stone)

「老人版コーチェラ・フェスティバル」などと揶揄された歴史的イベントは、6組の伝説的アーティストの衰えないパワーを見せつけた。

納得のステージだった。ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーはデザート・トリップ出演を発表した2016年春、ロック界の重鎮たちが集うこのフェスティバルを「老人版コーチェラ」と自虐的に揶揄し、10月7日の初日のステージでも、現役で活躍する60年代〜70年代の6組の伝説のロックスターが集結したフェスティバルを「英国紳士音楽家たちのためのパームスプリングス老人ホームだ」とジョークを飛ばした。「80年代後半を覚えているかい?」とジャガーが前置きしてからバンドは、1989年のアルバム『スティール・ホイールズ(原題:Steel Wheels)』からの一曲『ミックスト・エモーションズ(原題:Mixed Emotions)』へ突入した。

ストーンズもまたデザート・トリップに登場した他のアーティスト同様、新たな曲を披露して会場を盛り上げた。バンドはフェスティバル後まもなくリリースされるニューアルバム『ブルー&ロンサム(原題:Blue and Lonesome)』から、ジミー・リードのカヴァー『ライド・エム・オン・ダウン(原題:Ride ’Em on Down)』を演奏。さらにサプライズとして、ザ・ビートルズの『カム・トゥゲザー(原題:Come Together)』もライブで初披露した。まるで、1969年にストーンズがレコーディングした『レット・イット・ブリード(原題:Let It Bleed)』の代わりに自分たちが書いた曲であるかのように堂に入った演奏だった。ストーンズのステージの翌日、ニール・ヤングが若く勢いのあるバンド、プロミス・オブ・ザ・リアルを率いて『ハート・オブ・ゴールド~孤独の旅路~(原題:Heart of Gold)』や圧巻のギターを聴かせた22分間の『ダウン・バイ・ザ・リヴァー(原題:Down by the River)』などでオーディエンスを大いに盛り上げた。また、「ハンググライダーによる自爆テロリスト」などと歌う問題作『Neighbors』などの未発表曲も披露した。同10月8日には、ポール・マッカートニーがビートルズのメンバーとして初めて『ホワイ・ドント・ウィー・ドゥー・イット・イン・ザ・ロード(原題:Why Don’t We Do It in the Road?)』をヤングと共演した。1968年にリリースされたこの曲をマッカートニーがライヴで披露するのは初めてのことだった。

米大統領選の第2回直接討論会が行われた直後の10月9日、元ピンク・フロイドのシンガーでベーシスト、ロジャー・ウォーターズがデザート・トリップの最初の週を締めくくった。彼はピンク・フロイドの名曲と共に、政治色の濃いビジュアル・メッセージを含むステージをアメリカで初めて披露した。ハイライトは、『ピッグス(三種類のタイプ)(原題:Pigs (Three Different Ones))』を使った共和党候補ドナルド・トランプに対する容赦ない攻撃だった。バックには、同曲が収録されたピンク・フロイドのアルバム『アニマルズ(Animals)』(1977年)のアルバム・ジャケットに描かれた、ロンドンのバターシー発電所と煙の上がる煙突群のイメージを再現した。本番2日前にバックステージで撮影されたフェスティバルの予告編でウォーターズは、「このステージ制作には4ヵ月もかけたんだ」と誇らしげに明かしている。「これぞプロの仕事さ。バターシー発電所が砂漠のど真ん中に出現したら驚きだろ? 俺たちはそれをやってのけたのさ」。


(Andy Keilen for Rolling Stone)

Translation by Smokva Tokyo

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