EDMよ永遠なれ スティーヴ・アオキの終わりなき挑戦

自身のドキュメンタリーがNetflixで公開中のスティーヴ・アオキ:かつて周囲から蔑まれた少年がEDM界の頂点に昇りつめるまで (Photo by Caesar Sebastian)

スティーヴ・アオキとは何者か。Netflixで公開中のドキュメンタリー『I’ll sleep when I’m dead』も話題のスティーヴが、人体冷凍保存、セレブレティの父親、そしてレディ・アンテベラムとのコラボレーションを語る。

多忙なスティーヴ・アオキは、既に死後のプランまで立てているようだ。彼の死体はアリゾナにある人体冷凍保存研究機関、アルコー延命財団によって管理されることになるという。同団体によると、コンピューター内のデータと化した人間が永遠に生き続ける技術が誕生するまで、彼の死体は低温保存されることになるという。現在38歳のアオキにそう決意させたのは、人体冷凍保存が可能になる日は近いと主張する発明家レイ・カーツワイルの著書だったという。その計画を実行に移すため、アオキがアルコー延命財団に支払う額は約22万ドルにのぼると言われている。全身の冷凍保存は莫大なコストを要するため、同財団のCEOでさえも冷凍保存の対象を頭部に限定しているという。しかし底抜けの楽観主義者であるスティーヴ・アオキは、「200年後の完全復活」という可能性に賭け、毛髪から足の指先までを完全に冷凍保存すると決意している。

カーツワイルが唱えたコンセプトを眩いEDMの世界に投影したかのような、『ネオン・フューチャー Part 1&2』というアオキの最新作のタイトルは、彼の姿勢をよく表している。年に2,300万ドルを稼ぐ億万長者DJの楽観主義者ぶりは、ステージでも徹底的に貫かれている。年間300に及ぶショーをこなす彼は、カルヴィン・ハリス、ジミ・ヘンドリックス、ダフト・パンク、バックストリート・ボーイズ、フューチャー、そしてセリーヌ・ディオン(!)まで、様々なジャンルのトラックを次々にミックスしていく。底抜けに明るく、どこまでも庶民的で、ダンスフロアにおいては趣味の良し悪しなど無関係だと言わんばかりの彼の哲学は、最前列のファンの顔面にパイをぶつけるという、彼のショーにおけるお約束のパフォーマンスにもよく表れている。

Netflixで公開中の『I’ll Sleep When I’m Dead』は、アオキの徹底したポジティビティ、そして常軌を逸した多忙ぶりを描いたドキュメンタリーだ。同作ではカリフォルニア州ニューポート・ビーチで生まれ育ち、ハードコアバンドでプレイしていたストレートエッジの少年が、20代になってヒップスターたちと交流を持つようになり、自身のレーベルを成功に導き、ブロック・パーティやジャスティスの音楽をアメリカのオーディエンスに届け、イビザで不動の地位を確立するまでの軌跡が描かれている。

Translation by Masaaki Yoshida

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