Netflix『ゲットダウン』:バズ・ラーマンが描く、ヒップホップ誕生の知られざる物語

「どういう経緯でこの作品を手がけることになったかって?」BRONXのロゴが目を引くベイビーブルーのスウェットに身を包み、クイーンズにあるプロダクションオフィスで取材に応じたラーマンはこう話す。「そうだな・・・直感的にこれをやるべきだと思った。僕は自分の知らない世界で生まれた物語に惹かれるんだ。それはもしかしたら、僕が小さな町で生まれ育ったことと関係があるのかもしれない」故郷であるサウスウェールズのヘーロン・クリークについて「家もまばら」だと話す彼は、自分が知らない場所や時代を舞台とする作品に最も魅力を感じるのだという。「作品に関するリサーチを行う段階が、僕にとっては一番刺激的なんだ。実際の制作作業よりもね」

ラーマンがヒップホップの起源について関心を持つようになったのは2006年頃、彼のアシスタントに「ヒップホップ vs. ディスコ」というテーマのプレイリストを作らせた時だったという。その後スポンジのように様々な情報を吸収していったラーマンは、あらゆる時代の文献をかき集めただけでなく、ヒップホップ黎明期に作られた無数の違法テープを入手し、そのコレクションは「世界最大級」だと自負しているという。またオースドスクールの伝説的リリシスト、グランドマスター・キャズが案内役を務めたHush Hip Hop Tourに、大勢のスウェーデン人バックパッカーたちに紛れて参加したというラーマンは、もともとニューヨークの地下鉄システムの基盤を作り上げた人物が設立した老人ホームだった、ブロンクスのAndrew Freedman Complexで様々なリサーチを行ったという。しかし制作に向けて本格的に動き始めたのは、ラーマンにヒップホップカルチャーの奥深さを伝え、『ゲットダウン』のスーパーバイザーを務めることになる著名ジャーナリスト、ネルソン・ジョージとの出会いがきっかけだったという。

Translation by Masaaki Yoshida

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