ポール・マッカートニーが語るライヴ前のサウンドチェック・ショー:「これはマッカートニー族の儀式だ」

ーあなたのサウンドチェックは、いわばギグのような構成です。ある曲ではピアノの前に座り、アコースティック・セットもありますね。さらに『ミッドナイト・スペシャル』やカール・パーキンスのカヴァー曲など、あなたのルーツに対するリスペクトも感じられます。


ジェシー・フラーの『サンフランシスコ・ベイ・ブルース(原題:San Francisco Bay Blues)』もやるよ。それらの曲は僕らのレパートリーの『ミセス・ヴァンデビルト(原題:Mrs. Vandebilt)』(1973年 ウイングスのアルバム『バンド・オン・ザ・ラン(Band on the Run)』に収録)や、『エヴリナイト(原題:Every Night)』(1970年 ソロ・アルバム『マッカートニー(原題:McCartney)』に収録)に通じるものがあるんだ。これらをコンサートでやることはもうないけれど、サウンドチェックでは引き続きプレイするよ。その場の雰囲気を見て、目指すレベルにチャレンジできているかどうかチェックするんだ。


ジェリー&ザ・ペースメーカーズではなくレイ・チャールズのバージョンの『Don’t Let the Sun Catch You Cryin’』(1959年のアルバム『The Genius of Ray Charles』に収録)は、ビートルズ時代にハンブルクでプレイしている。試すにはちょうどいい昔の曲だよ。ローディーたちもよく心得ていて、「マッカートニーはいろいろ試しているんだな。彼はあそこでペダルを踏むんだな」って感じさ。本番で起きることのすべてをリハーサルでやっているんだ。


でも本番では予期していなかったことも起きる。だから飽きないんだ。コンサートは楽しいよ。すべてリハーサルでチェックするとはいえ、本番ではもっと多くの観客の前で、違ったセットリストをプレイするんだからね。いつでも新鮮だよ。そして常に前進し続けるんだ。いわばマッカートニー族の儀式だね。僕らはみんなこの儀式をよく理解し、大切にしている。


ービートルズ時代の1964年にはコンベンションホール、1966年にはジョン・F・ケネディ・スタジアム、さらにウイングスの1976年のツアーでは複数回、フィラデルフィアでプレイしています。フィラデルフィアでは数多くのコンサートを行ってきた歴史があります。


いつでも素晴らしい街があって、フィラデルフィアもそのひとつさ。アメリカには「ニューヨークとロサンゼルス以外はない」なんてジョークもあるけどね。


ーそれはニューヨークとロサンゼルスの出身者がよく言う言葉ですね。


でも実際は違う。僕は大都会ロンドンではなく、ものの少ないリヴァプール出身だけれど、そういう場所ではなんでも家族が中心になる。一生懸命に仕事をし、子どもたちを寄宿学校へ入れる。住居、家族、両親の仕事とか、身近なものがとても大切なんだ。


だからミルウォーキー、シンシナティ、フィラデルフィア、ピッツバーグなんかの街は好きだね。なんだか自分の故郷にいるような気になるんだ。そこに住む人々のしていることもよくわかるし。彼らは自分の子どもを連れて来て、こう言うんだ。「ほら、この人が私の言ってた人だよ。あのバンドにいた人だよ」って感じでね。

Translation by Smokva Tokyo

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