メタリカの『ブラック・アルバム』、あなたが知らない10のこと

4. メタリカは、アルバムのプロデューサーにボブ・ロックを起用したが、彼がそれまでにプロデュースを手がけたバンドの大ファンというわけではなかった。

アルバム『メタリカ』の指揮に、プロデューサーのボブ・ロックを起用するというバンドの決断は物議を醸すものだった。なぜなら、このカナダ人のプロデューサー兼エンジニアは、当時モトリー・クルーやボン・ジョヴィ、キングダム・カム、ザ・カルト、ラヴァーボーイとのスタジオ作業で有名な存在で、この5バンドにはスラッシュ・メタルの特徴がほとんどなかったからだ。だが、メタリカのメンバーは、この5バンドがロックと共に作った音楽ではなく、これらのバンドのサウンドを作った彼の手法に興味を持っていたのだ。

「俺たちはボブと一緒に魅力的なミックスを作りたかったんだ」と、2007年、『Metal: The Definitive Guide』のインタヴューで、ウルリッヒはジャーナリストのシャープ・ヤングに語っている。「バンドは低音の激しいサウンドを作りたがっていた。その曲がボン・ジョヴィのアルバムに入っていようが、ザ・カルトやメタリカのアルバムに入っていようが俺にはどうでもいいことさ。サウンドはサウンドだし、俺たちが必要としていたものだったからね」


5. 『ブラック・アルバム』は、メタリカが1枚のアルバムで3種類の異なるギター・チューニングを使用した初めての作品である。

長年、ハードロック・バンドやメタル・バンドの多くは、よりヘヴィなサウンドを実現するためにオルタネート・チューニングを使ってきたが、1991年以前のメタリカは、ギターについては主にEスタンダード・チューニングを使用していた(1986年にリリースされたアルバム『メタル・マスター』収録曲の『ザ・シング』(ギターを一音半下げていた)と、1987年のEP『The $5.98 EP: Garage Days Re-Revisited』に収録されたカヴァー曲2曲(一音下げていた)という例外を除いて)。アルバム『メタリカ』収録曲の12曲中10曲では再び、Eスタンダード・チューニングを使用したが、ボブ・ロックがもう少し多様なチューニングを使うべきだと指示し、『サッド・バット・トゥルー』ではギターをDスタンダードに、『ザ・ゴッド・ザット・フェイルド』ではE♭に変えている。

「俺は、この曲を含めたすべての曲がE調であることに気づいた」と、ボブ・ロックは『サッド・バット・トゥルー』について述べている。「俺がこの事実をバンドに知らせると、彼らは「まあ、Eが一番低いトーンだろ?」と言ったんだ。だから、俺がプロデュースした曲で、メタリカも大好きなモトリー・クルーの『ドクター・フィールグッド』では、Dチューニングにしているとバンドに教えてやった。それで、メタリカもDチューニングに変えてみたら、リフがものすごく強烈になったんだ。何があろうと止めることができないような強烈なパワーだった」


6. 『ブラック・アルバム』は、メタリカ全員がスタジオで「生演奏」により録音を行った最初の作品である。

「俺たちは(このアルバムに)ライヴの雰囲気を取り入れたかった」と、1991年、ジェイムズ・ヘットフィールドはギター・ワールド誌に語っている。「今までは、カークとジェイソンを入れずにラーズと俺のふたりでリズムパートを構成するか、ラーズがひとりでメトロノームに合わせて演奏していたんだ。今回、俺はスタジオでバンドとして一緒に演奏してみたいと思った。そうすることで、曲に迫力が生まれてもっと良い雰囲気が出るからね。全員がひとつの部屋にいると、お互いの様子を見ることができるから、このやり方はかなり役に立った。特にベースやリードギターの面で。2ヶ月間、ほとんどの曲を演奏するうえでも、スタジオに入る前ですらかなり役に立ったよ」

7. 『ジ・アンフォーギヴン』と『ナッシング・エルス・マターズ』でのジェイムズ・ヘットフィールドのヴォーカル・パフォーマンスは、クリス・アイザックの影響を直接受けている。

1990年後半から1991年前半に世界的な大ヒットを記録したクリス・アイザックの『ウィキッド・ゲーム』は、ジェイムズ・ヘットフィールドの心も引きつけた。そして、彼はメタリカのスローテンポの曲2曲でアイザックのムーディなヴォーカルを真似るにはどうすべきか、ボブ・ロックに助言を求めた。

「彼(ヘットフィールド)から「ボブ、俺は本当の意味で歌ったことがない。ただ怒鳴っていただけみたいだ」って言われたんだ」と、2015年、ロックはクリス・ジェリコとのインタヴューで振り返っている。「彼はクリス・アイザックのアルバムをかけて、「『ナッシング・エルス・マターズ』と『ジ・アンフォーギヴン』では歌ってみたい。こんな風に歌うにはどうしたらいいのか?」と言った。俺は「良い歌い方を教えてやるから、自分の声を強める必要はない。君がクリス・アイザックの声から感じ取っているものは、彼が歌っている時のニュアンスなんだ。彼は声を強めていないだろ。彼はまさに演じている。だから君も演じるのさ」と伝えた。調整を進めていくと、彼は慣れていって、魅力的な歌い方を会得して歌えるようになったんだ。日を追うごとに上達し、使いこなせるようになっていった。彼は素晴らしいシンガーになったよ」

Translation by Shizuka De Luca

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