エイミー・ワインハウス:知られざる偉大な未発表曲10選

Photo by Rob Verhorst/Redferns

『フランク』のアウトテイクから魂の込もったビートルズのカヴァーまで。今は亡き歌姫が遺した最も感動的な未発表音源を聴く。

エイミー・ワインハウスは、並々ならぬ才能の持ち主だった。その自由奔放な振る舞いによって、ヘッドラインを賑わせたエイミーだったが、その作品を不朽のものにしたのは、彼女の音楽に垣間見ることができる一瞬の弱さだった。2011年にエイミーが27歳で亡くなったことは、既に悲劇的伝説となっている。

エイミーが27年の生涯で遺した音楽作品は、たった2枚のアルバムと、わずかなカップリング曲、ライヴ音源、そして他のアーティストの作品にゲスト参加した時の音源だけだ。貴重な音源をまとめたコンピレーション・アルバム『Lioness: Hidden Treasures』がエイミーの死後に発表された際、レーベルの重役たちは、彼女が生前に制作を進めていた未完成の3枚目のアルバムのオリジナル・デモ音源を破棄したこと、そして未発表音源が残っていないことを主張していた。しかしながら、数多くの高音質の音源は、海賊版やインターネット上で出回り、幻のアルバムを切望するファンによって愛され続けている。エイミーの没後5周年を記念し、彼女のお宝未発表音源を是非聴いていただきたい。



『Long Day』
「私はスターになろうとしている女の子でも、ミュージシャン以外の何かになろうとしている女の子でもないの」。かつてエイミーは、こうインタヴューで話したことがあった。「私は有名人にはならないと思ってる。そんなことに耐えられるとは思わないの。きっと狂ってしまうわ」。自らの精神に対する彼女の洞察力を考えると、『Long Day』の歌詞はよりいっそう心を打つ内容だ。2003年のメジャー・デビュー作『フランク』のリリース後に作られたこの曲は、有名になりたくない有名人について歌われているが、この時既に彼女は、その自由奔放さで有名になっていた。「自らを窮地に追いやってるこの日々で、私はただ働くしかないの」と、一見陽気な演奏にのせてエイミーが歌う。「かつて私にはたくさんの感情があったけど、最近は自分が誰であるかを忘れてしまってる」。同曲でエイミーは、トレードマークのユーモアと引き換えに、明瞭な表現を使っている。そしてその言葉は、彼女の運命を予示している。

Translation by Miori Aien

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE