スティング、約20年ぶりにロック・アルバムを制作:プリンスの死や気候変動からインスパイア

プリンスやデヴィッド(・ボウイ)、グレン・フライ、レミーのような俺たちの文化を象徴するアイコンが亡くなった時、俺たち皆がどれほどショックを受けるか。と語るスティング。

プリンスの死や気候変動からインスピレーションを受けた「衝動的」なニュー・アルバムとは?

素晴らしい土曜日の朝にもかかわらず、スティングは無精ヒゲを生やし、むさ苦しい姿でニューヨークの暗いスタジオ内のソファに寝そべり、1日の仕事を始める前の仮眠を取っている。彼は、昨夜実施したピーター・ガブリエルとのジョイント・ツアーの3公演目のニューヨーク、ジョーンズ・ビーチ・シアター公演の疲れがまだ取れていないのだ。「まるでエクササイズだね。5時半から起きているんだ。牛乳配達人になったみたいだよ。」と彼は述べる。スティングは、ここ何年も作ってこなかったギター主体のロック・ミュージックに回帰したアルバム『57th & 9th』(タイトルは彼が毎日スタジオへ通う際に横断する交差点の名前にちなんだもの)の制作を終えるため、長時間余計に働いている。「これはリュート・アルバムじゃない」と、2006年にリリースしたアルバム『ラビリンス』について触れながら、スティングは笑顔でこう述べる。「ここ最近作ったなかでは一番ロックな作品さ。このアルバムは自分がやっているすべての要素を集めたオムニバスのようなものだけど、旗艦はこういうエネルギッシュなものになるだろう。マストを揚げて、どう進んでいくのか見ることができてとても嬉しいよ」

船の比喩が彼の頭に浮かんだのは、おそらく、戦後のイギリスで過ごした彼の幼少時代の経験を基に書いたミュージカル『ザ・ラスト・シップ』のために作曲し、最終的には演技に挑戦したりして、ここ数年間過ごしてきたせいだろう。今回のプロジェクトは、クリスマス・キャロルのフルアルバムやオーケストラ・アルバム『シンフォニシティ』のリリースや、2007年と2008年に実施した、長期間にわたるポリスの再結成ツアーの実施といった、10年間にわたる生産的で自由気ままな活動の結果として生じたものだが、彼自身は、それらの活動によるニュー・アルバムのサウンドへの影響はなかったと主張する。「バンドの再結成は昔を懐かしむための行動で、純粋でシンプルなものだった。昔を懐かしむ行動自体はとても上手くいったけど、それ以上のものにしようという努力はなかった」と彼は述べる。『ザ・ラスト・シップ』はブロードウェイへの進出を果たしたが、3ヶ月で閉幕してしまった。「ミュージカルをさらに追求していくのはとても楽しかった。今までの人生で最高にやりがいのある5年間だったよ」と彼は述べる。ミュージカルが閉幕した後、スティングは貴重な休暇を取り、自分自身を見つめ直した。「よく公園中を歩き回っていたんだけど、俺と失業中の人たちとの間に大きな違いはなかったよ。まあ、俺には帰る家はあったけど、不安を感じるようになったね」

Translation by Shizuka De Luca

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