映画『AMY エイミー』:世界中を虜にした歌姫の真の姿を描いたドキュメンタリー

アシフ・カパディアが監督を務めた、エイミー・ワインハウスの生涯を描いたドキュメンタリー『AMY エイミー』

『AMY エイミー』が描き出す、世界中を虜にした歌姫の真の姿とは。


27歳でこの世を去ったエイミー・ワインハウスの壮絶な人生と悲痛な最期は、これまでにも幾度となく語られてきた。しかしアシフ・カパディアが監督を務めた、主観を排除した事実のみで構成された本ドキュメンタリーは、彼女の知られざる一面を見事に捉えている。本作では北ロンドンに生まれたいたずら好きなユダヤ人の少女が、エラ・フィッツジェラルド、セロニアス・モンク、トニー・ベネットといった、ジャズ / ソウル界の巨匠たちと並べて語られるほどの存在へと成長するまでの物語が描かれる。

本作ではドキュメンタリーにありがちな、真実の歪曲が徹底的に排除されている。名声の重圧に苛まれ、2011年に急性アルコール中毒でこの世を去ったワインハウスは、同世代の若者たちがそうするように、記憶に残る瞬間の数々や日々の些細な出来事を様々な形で残していた。編集を担当したクリス・キングの手腕により、エイミーの家族や仲間たち、信頼を寄せたマネージャーのニック・シマンスキー、親友のジュリエット・アシュビーとローレン・ギルバートらとのプライベート写真や映像の数々は、物語を構成する重要な要素となっている。メディアによって徹底的に露出され続け、大衆を遠ざけたエイミーの若さゆえの未熟さが、本作では残酷なまでにリアルに伝わってくる。本作において、極限まで追い詰められていた娘を守ろうとしなかった父親のミッチ・ワインハウスは、責められるべき存在として描かれる。またエイミーがコカインとヘロインに依存するきっかけを作り、彼女を利用し続けた元夫のブレイク・フィールダー・シビルは、彼女の死に対して誰よりも重い責任を負う人物として描かれている。

Translation by Masaaki Yoshida

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