ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックスとの思い出と最新アルバムを語る

─女性は男性よりも、突っかかってこない?



そんなことはないね。彼女たちは独特の雰囲気を醸し出してる。バランスのよく取れたチームなんだ。頑固な女性もいることを忘れないでおこう。俺がボスであるなら、それで良いんだ。従うか、やめるかのどちらかってわけ(笑)。

─『レヴォリューション・ウィル・ビー・テレヴァイズド』や『サグ・クラブ』といった新曲には、意外なことに現代の問題に対する怒りが込められていますが、ニュースが好きなのですか?



最近のことでね。ツアー中の狂ったライフスタイルだと、物事を詳しく知ることができないんだ。そうであるべきなんだけどね。俺が考えた今回のアルバムのコンセプトは、『日常』だったんだ。インターネットで世界で起きてる最悪なことを調べたさ。その感情をロージーに伝えて、彼女がしっかり取り組んでくれた。俺はYouTubeも見る。嘘も真実も探してるんだ。政治家とかコメンテーターの表情を見るんだよ。映像をリプレーすると、表情からその区別がつくんだ。人間が嘘をつくことがどれだけ簡単なことか、よく分かったんだ。表現したいことをロージーに伝えると、彼女は座ってせっせと作詞してくれた。始めの数日間は何も見せくれなくて。それから彼女が、ガイドヴォーカルを一曲に付けたんだけど、それにすっかり驚かされた。俺がまさに表現したいことだったんだ。俺たちがアルバム作りに時間をかけたように聞こえるだろうけど、実際はかなり早くまとまったんだ。曲の構成には約2週間、もしかしたらそれより短かったかも。それから、他のものといじりまわして、アルバムの核は、およそ3日とか4日で出来上がったんだ。

─『スケアード・フォー・ザ・チルドレン』は、ジミ・ヘンドリックスに影響を強く受けていますね。



偶然そうなったんだ。(ヘンドリックスの)『天使』の4つの音を使ってる(リックをハミングする)。しかたがなかったんだ。今以上に、ヘンドリックスを愛したことはない。過去に聴いたことがなかった、(69年の)ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴのすごい音源を聴いてるんだ。『レッド・ハウス』とか、驚くべきパフォーマンスだったよね。『リトル・ウィング』のコードを覚えてからは、俺を静かにさせることができる人なんていないんだ。

─ヘンドリックスのライヴを初めて見たのは、いつでした?



たしか、彼の(ロンドンでの)初ライヴだったかな。クイーンズゲートにある小さな地下のクラブだった。おしゃれなクラブで、ほとんどが18から25のハットとかかぶって着飾った、女の子たちだった。当時の彼は、まだ有名じゃなかったんだ。彼が登場した時、俺は「マジかよ」って。ミリタリールックの彼の髪は、あちこちにツンツン突き立ってた。ライヴは(ボブ・ディランの)『ライク・ア・ローリング・ストーン』で始まったんだけど、「あぁ、今の俺はギタリストなんかじゃないな」って思ったね。

─ヘンドリックスとは親しかったのですか?



頻繁に会うことはなかったけど、とても親しかったんだ。ジェフ・ベック・グループが、(68年にニューヨークのナイトクラヴ)ザ・シーンでライヴした時には、ほとんど毎晩、彼と共演した。彼がギターを持って参加するとか、なんて経験なんだって感じだよな。彼が俺のギターを弾いた夜があるんだ。彼、ギターを持ってきてなくてね。だから俺は、ベースを弾くことになったんだ。その時の写真があって、ジミの後ろに(ベーシストの)ロン・ウッドが写り込んでる。俺は全く写っていないんだけどね。

Translation by Miori Aien

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