知られざるエミネムのベスト・トラック20曲

Photo by Gary Friedman/Los Angeles Times via Getty Images

2013年にローリングストーンUS版本誌の表紙を飾ったエミネム。ファンの中には、『ルーズ・ユアセルフ』の最初のヴァースを暗記しているという人も少なくないだろう。しかしコアなファンの間でも、以下で紹介するエミネムの隠れた名演20曲の存在を知らずにいる人は少なくないはずだ。

ソウル・インテント『アンリアリスティカリー・グラフィック』(1992年)

当時M&Mと名乗っていたエミネムは、デトロイトの高校に通う一方で、カオス・キッドとともにソウル・インテントとして活動していた。ベースミント・プロダクション・クルーの一員として2人が残したデモテープ数本は、現在ではマニア垂涎のプレミアアイテムとなっている。1995年発表のカセット『F#@!in’ Backstabber』は、Discogsで560ドルの値がついている。1992年作『スティル・イン・ザ・ベースミント』に収録されている『アンリアリスティカリー・グラフィック』でのエミネムのパフォーマンスはアマチュアの域を出ていないものの、「お前を汚れた洗濯物のように扱ってやる」というリリックからは、独特のユーモアのセンスがうかがえる。なお当時のパートナーのカオス・キッドは、2011年に自らの手で命を絶っている。


エミネム『インフィニット』(1996年)

ドクター・ドレーと出会う数年前、エミネムはデトロイトのインディーレーベルから『インフィニットLP』をリリースしている。しかし大きな注目を集めることはなく、アルバムの売り上げはわずか1000枚程度だったとされている。しかしタイトル曲の「俺の紙とペンが起こす連鎖反応 / 弛緩し始めるお前の脳 / 世間を騒がす狂気のピエロ」というリリックは、リリシストとしての抜きん出た才能の片鱗を既にうかがわせている。


インディジニアス・トライブ・フィーチャリング・エミネム『ドラスティック・メジャーズ(マイクロフォン・オートプシー)』(1997年)

1997年頃、変り種が集うラップ・オリンピックやスクリブル・ジャム等のショーケースイベントで頭角を現し始めていたエミネムは、同年に『スリム・シェイディEP』を発表しているが、デトロイトのアンダーグラウンドで活動していたインディジニアス・トライブと共演したこの曲は、それとほぼ同時期にカセットとしてリリースされている。曲自体はお世辞にも優れているとは言い難いものの、3ヴァース目のエミネムのラップは一聴の価値がある。急速に知名度を上げていたエミネムにスタイルをパクられたと主張していたインディーラッパーのケイジを、エミネムはこう揶揄している。「さっさとしな / ケイジの妹のお迎えの時間だ」

Translation by Masaaki Yoshida

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