アップル流、音楽ストリーミング戦争を勝ち抜く方法

アップルのオリジナル・ミュージック・コンテンツを担当しているラリー・ジャクソンは、『Apple Music』を「ポップ・カルチャーに関するあらゆる事柄の交差点」にすることが目標だと語る。


「アップルはとても魅力的だ」と語るのは、ウィークエンドやアリアナ・グランデを擁するリパブリック・レコーズのモンテ・リップマン社長だ。「彼らは、これまでに誰もしなかったことをしようとしている。特に最近は、とてもクレバーに、画期的なチャンスを持ち込んでくれている」。ジャクソンは、『Apple Music』を「ポップ・カルチャーに関するあらゆる事柄の交差点」にすることが目標だと語っている。こうしたモデルは、「80年代90年代のMTV全盛期と同じだ。当時はマイケル・ジャクソンやブリトニー・スピアーズがそこにいると感じられたものだ。あのような感覚を呼び起こすにはどうすれば良いのかということを考えているんだ」とジャクソンは述べている。

ラリー・ジャクソンがロサンゼルスのSoHo Houseレストランの特等席でさまざまな契約をまとめる一方で、アップルはエミネムの『フェノメナル』のビデオに資金を投じたり、キース・リチャーズ、ブラック・アイド・ピーズ、セレーナ・ゴメスといった面々とのパートナーシップを締結していった。ジャクソンはまた、テイラー・スウィフトの『ザ・1989・ワールドツアー』の映像制作の契約も結んだ。スウィフトによると、彼女とジャクソンは「一緒にブレインストーミングをして、プランを練って、フィルムを編集した」のだという。こうした関係が、スウィフトがラップを口ずさむ、ドレイク & フューチャーの『Jumpman』の広告へと広がっていったのだ(『Jumpman』のセールスはその結果431%も増加したという)。

いくつかの失策もあった。ジャクソンは、カニエ・ウェストのアルバム『The Life of Pablo』との契約競争に敗れた。アイオヴァインによると、ウェストの方が交渉を打ち切って、自身がジェイ・Zらと共同経営している『Tidal』でアルバムを配信した。「結局は、友だちと仕事がしたかったんだ」とアイオヴァインは語っている。「簡単な話だよ」。(『The Life of Pablo』は6週間後に『Apple Music』をはじめとするストリーミング・サービスで配信されたが、このことがファンの怒りを買い、訴訟沙汰となっている)

アップルのスター重視のシナリオは、アイオヴァインがビーツ・ヘッドフォン時代に取った戦術にさかのぼる。ビーツは同社株式と引き替えに、レブロン・ジェームズとプロモーション契約を結んだ。「当時はとてもうまくいった。でも、いまは独占配信をしても、あの頃のような話題にはなっていない」と語っているのは、元ユニバーサルのデジタル部門担当役員だったラリー・ケンズウィルだ。「だから、まだ結論は出ていない」。

当面、メリットを得るのはトップ・アーティストやマネージャーだ。「クールなことをするためのパートナーシップにすぎないと思っている」と語るのは、フューチャーのマネージャー、アンソニー・サリー(Anthony Saleh)だ。「まるで朝起きて朝飯を食うのに金をもらっているみたいだ。いずれにしてもやることなんだけどね」

リップマンはアップルの「冒険心と攻撃性」には敬服すると語っている。「たとえ話で説明しよう。ジャクソンは、アイオヴァインから聞いたこんな話を繰り返し話してくれた。"電線にハゲタカが2羽止まっている。1羽は、何かが死ぬのを待っていた。するともう1羽がこういった。ああ、もう待っているのはたくさんだ。こちらから殺しに行こう"。それがアップルの哲学なんだよ。こちらから攻め込んでいくのみなんだ。」

Translation by Kuniaki Takahashi

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