マジック!フロントマンが語る、大ヒット曲『ルード』の影響と新譜にかける思い

─むしろ、今のあなたは意見を無理やり聞かされている状態ですよね。

うん。皆、批判したいか賞賛したいかのどっちかだよね(笑)。ただ、俺たちのことを心から嫌っている人はいないと思うよ。ミュージシャンである俺たちも、時には聴いた曲すべてを嫌いになることもある。でも、そういう気持ちって対抗意識から来るものだと思っている。何かを嫌いになることは構わないけど、誰かを侮辱するのは立派なことじゃないから、やめるべきだというのが俺の考えさ。「自分は気に入らなかった」って言うのは構わないけど、他に何か言ったり、わざわざ自分のお気に入りの曲は何だとか俺たちに言ったりはしないでほしい。皆、無駄なエネルギーは使わないでよね。

─これほどの大ヒットを記録した後というのは、どんな対応をするものなのでしょうか?

ある時点で曲が廃れるまで待って、それから、バンドとしてスタジオに戻りたいのか、ライヴをしたいのか決めるべきだね。それで、俺たちの場合は「ライヴをしようぜ」ってことになった。だから、1年半か2年くらいの間はライヴだけやったんだ。ニュー・アルバムはツアー中に作ったもので、マニラやブラジル、ドイツで作曲をした。ちなみに、『レイ・ユー・ダウン・イージー』は、ドイツでレコーディングをした曲さ。毎日、作曲をしていたから、ストックは80~90曲くらいになったよ。

─自分たちはポップ・バンドなのだと考えるようにしていると言っていましたが。

ポップ・ミュージックは変わったんだ。70年代後半や80年代前半のポップはかなり独創的なものだったけど、今はそうじゃない。でも、俺たちは自分たちのことを、少し独創的なパフォーマンスをするバンドだと感じていて、自分たちのサウンドを取り入れてきた。俺はソングライターとして、あらゆる方向へ進むことができるんだ。皆は理解できないかもしれないけど、カッコいいと思えるような独創的な曲を自分自身のために作ることもできるし、皆が気に入ってくれるような音楽を作ることもできる。自分はそういう、よりポップな作曲スタイルの才能に恵まれていると思うよ。問題は、自分たちのサウンドを維持することとか、ある程度、音楽の才能に対する愛を失わないってことだった。バンドメンバーは非凡な才能を持つミュージシャンだから、俺たちの音楽を聴いて、その才能を理解できないような人たちはいらない。だから、慎重な作業だったよ。キャッチーでもあり、音楽性の高いものになるように作曲する必要があったわけだから。

─綱渡りのような作業ですね。



基本的にはそうだね。そういう微妙なバランスが必要な曲は作るのが一番難しいんだよ。表現豊かなものを作るのはすごく簡単だけど。でも、今、表現豊かな曲を作って、皆にその曲を好きになってもらいたいとか、ライヴに来てもらおうとかいろいろ求めることはまた別の問題だ。俺たちがしたのは、「心配はよそう。ただ曲を書き続けよう。曲を完成させるためにLAへ行く時期が来たら、どんな曲ができたのか分かることだから」って言い聞かせることだった。それだけだったよ。昨年の秋、LAに行った時、俺は「皆、これらの曲はどれも十分な出来ではないと思うんだ。より一層努力が必要だと思う」って話をした。それから、この『グロリア』っていう曲ができた時は、「これは俺たちのスタンダードだ」って感じたよ。それで、このまさに80年代って雰囲気の曲が、ニュー・アルバムに収録されることになったんだ。

─どんな曲がラジオで人気になるのか、あなたはよく分かっているように思います。



絶対そんなことはないよ。俺は『ルード』を選んですらないし、ヒット曲を選ぶのはあまり得意じゃないんだ。他のミュージシャン(ジャスティン・ビーバーやクリス・ブラウンなど)のために作曲をしていた時でさえ、そういうのは苦手だった。皆のためにパフォーマンスをする時もそうだし。前のクリスマス休暇で帰国した時も、「皆に新曲を披露して、感想を聞いてみようぜ」ってバンドの仲間に言ったんだ。そしたら、バンドメンバー以外の全員が『レイ・ユー・ダウン・イージー』とか新曲の『レッド・ドレス』を気に入ったんだ。皆、ああいうメロディに引きつけられた。そういう音楽を演奏する時って、聴く人がそう感じているのが分かるのかもしれない。こういう特定の曲がたくさんの人の心を捉えるんだ。でも、そういう曲がなかったら、彼らは絶対に他の曲を聴いてくれないだろう。だから、そういう曲が必要だし、両方のタイプの曲が必要なのさ。それはマジック!を紹介する役割にしかならないけど、人の心を魅了するためには、親しみやすくて分かりやすいものを使うべきなんだ。

─あまり商業向けではないマジック!の曲も、完全に分かりにくい曲というわけではありませんよね。

も ちろんだよ。俺たちの音楽の才能はもっと洗練されたものなんだ。ひけらかそうとはしないし、特にトリックもなくて、人工的な要素を集めて作った曲は2、3 曲しかない。人が聴くのは、バンド全体としての演奏だから。絶妙なバランスだけど、俺たちはそれを成功させたんだと思う。ただ、このアルバムは間違いなく ポップ・アルバムだけどね。

Translation by Shizuka De Luca

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE